材質表示の義務

2022年6月5日更新

自動車部品の材質表示の義務は、自動車リサイクル法(2005年1月施行)を根拠にしており、具体的には樹脂、プラスチックやゴムを使用している部品には主として材料記号にて材質を表示する必要があるというものです。

これは日本に限らず他国、例えばEUやアメリカ、韓国での法規制でも同様の対応がとられています。理由は国内同様、リサイクルの可否や方法の判別のためです。このため、使っている材質の表示については国際統一規格が存在します。

日本では自動車工業会が材質表示ガイドラインを策定しており、多くの自動車メーカーではこれに基づき納入部品にも材質を表示するこを部品メーカーに求めています。

なぜ材質を表示するのか

自動車は流通する台数・規模がもともと大きく、年間400万台以上廃棄・排出されるといわれています。なかにはパーツセンターでもぎ取ることを前提に下取りされるものもありますが、これらは中古車販売事業者や自動車販売業者等からユーザーに自動車として販売されないものについては引き取り先の自動車解体業者にて解体・分解されることになります。

もちろん、車検や修理などで特定の部品だけの交換もあり、その場合、対象となる排出部品はさらに増えます。

この過程で回収された自動車の各パーツはリサイクルが実施されますが、材質がわかりにくいプラスチックやゴムについては、その種類によって再利用や処分方法が変わるため、このような表示ルールが策定されています。

フロンや各種ガス、油など環境上特定の方法での処分が必要なものから有価物として再利用が可能なものまで種々の材質がありますが、自動車はおおよそ3万点前後もの部品から構成されているものの、その80%はリサイクルされるといわれます。これは驚異的な数字かもしれません。

材質表示の方法

たいていは自動車メーカーと部品メーカーとの間で仕様を取り交わす際の図面に指定がなされるため(自動車メーカーから図面提供される場合と、要件提示があり中身は部品メーカーが設計して承認を得る場合があります)、製品に刻印の形でつけられることが多いです。

取り交わし図面に記載があるということは、納入時には刻印なしでは納入できない、ということです。稀に図面から漏れてしまっていることがありますが、あとから分かれば設計変更扱いで材質刻印を追加する措置が取られます。材質の表示はそこまで徹底されている制度ということになります。

表示対象となる部品がプラスチックやゴムであるため、エンボス加工(浮き彫り)によるものがほとんどです。ラベルなどではすぐに剥がれたり読めなくなってしまうため、このような表示方法がとられており、製造工程においては金型にテーキン加工を施すことで、浮き彫り加工ができるようにしてあります。

表示は下表のように、材料記号を不等記号で囲むというスタイルです。添加している主要なフィラーについてもハイフンでつないで表示します。複合材料の場合、例えば合成ゴムと天然ゴムの混合品なら、NR-BRのように並べて記載します。材料を示すアルファベットとなる記号はJISのものが使われます。なお、表示の際「>から<」までの文字の長さは70ミリとなります。

材質表示の記号例
材質表示記号 意味
>NR< 天然ゴム(NR)を使用
>NR-BR< 天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)の混合
>EPDM< 合成ゴムであるEPDMを使用
>PP-TD20< ポリプロピレンにタルク20%をフィラーとして使用
>PA-GF30< ポリアミドにガラス繊維30%をフィラーとして使用

表示が免除される場合

ただプラスチックやゴムを使用した自動車部品にも大から小まで様々なものがあります。中には文字をいれる余地がないものもあり、このため、材質表示ガイドラインにおいては、重量が100グラム以上の部品が対象になっています。100グラム未満のものについては、材質表示が可能な場合はつけるというルールです。

実際には、つけられる限り金型にテーキン加工を行って材質刻印を打つことがほとんどです。結局、材質以外にも型番や製品番号、ロット番号、製品番号、社名、ロゴなど製造会社によって製品を識別する何らかの記号や文字列を入れるため、それとあわせて材質も刻印されるという潮流です。

古い自動車部品の場合、重量が100グラムを超えていても、この材質表示がなされていないものがありますが、自動車メーカー側で気が付くと部品メーカーに対して図面を材質刻印ありのものへ変更するよう要請が出ます。そうなると現行部品の在庫がなくなる等のできるだけ早いタイミングで材質刻印がついた製品の納入へ切り替えていく必要があります。

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