納期と納入日の違い

2021年5月1日更新

納期と納入日の違いをよく理解していないと取引の現場でトラブルになることがあります。どちらも物品や作業など、契約で指定した「期限」までに履行することを求める際に使われる用語ですが、法的には違いが設けられています。特に下請法が適用される法対メーカーとの取引では、この二つの用語の解釈を間違えると、自社が指定した日よりも前に納入されても、受け入れを拒否できないという問題に直面することになります。

納期とは期限日、デッドラインのこと

まず納期の本来の意味は、納入の期限、締め切り日のことです。つまり、指定されている納期の日付までに納入すればよいということになり、前倒しでの納入は当然OKとなります。

一方、納入日とはピンポイントで「ある日付」を納入の日として指定した表現です。つまりこの日付よりも後に納入すれば納入遅延扱いとなるのでNGとなることは当然ですが、前に納入することもNGという意味合いがあります。

下請事業者との取引で特に注意を要するのは、この法律では「受領拒否の禁止」の条項があり、発注者となる親事業者は下請事業者に責任がない事柄で物品の受領を拒否すると下請法違反に問われる点です。つまり、問題となるのは納期よりも前に持ってこられても置き場がないので持ち帰ってもらう、というようなことをするとこの「受領拒否」に該当してしまう、ということになります。こうした場合は、「納期」ではなく「納入日」を指定して発注を行う必要があります。

数日だろうが、数週間だろうが早く納入してもらう分に一体何の問題があるのかと疑問を持たれるかもしれませんが、これは以下の事情があります。

指定された時間に納入することが求められる場合

自動車業界と、そこへ納入するサプライヤーとなる自動車部品の業界では、納期というのは原則、前倒し納入は不可との暗黙の了解があります。というのも、自動車はおよそ3万点もの部品から構成されており、実際の車が出来上がってくる車両工場で使う部品点数はこれよりも少ないとはいえ、すべての部品を在庫していては工場の置き場がパンクしてしまいます。

そこで、自動車メーカーは、車両組み立ての生産計画にあわせて日付だけでなく時間も指定した納期でサプライヤーへ発注をかけます。つまり、工場での組み立てに使う時間にあわせて各サプライヤーに納品してもらう、という考え方です。車両組み立てで部品が消費されれば、次の発注を行います。こうして場所を食うといわれる自動車の生産も、部品の置き場を最小にして組み立てを行っていくことができます。

逆に言えばこのように指定しないと、部品の置き場はいくらあっても足りなくなってしまい、コスト増、運用工数大となってしまいます。

このような背景がある中、サプライヤー側で「部品が早くできたので持ってきました」というようなことをやると、自動車メーカー側の部品の受け入れ場所や倉庫に、まだ使い終わっていない在庫が残っていますので、各メーカー好き勝手に前倒しされると置き場がなくなり、あふれかえってしまいます。

こうしたことから納入は指定された日と時間、場所を守って納入すること、というのは自動車業界での不文律の一つとなっています。法令上の「納期」とは違った意味を持つことがあるため、注意を要します。

納期と納入日の違い
納期 納入日
納入期限のことで、指定された納期が「締め切り」の日となる。締め切りの日であるため、その日よりも前に納入することも可。ただし、業種・業界によっては納期の前倒しも遅れと同じように不可としている場合がある。 納入する日、あるいは実際の納入を行った日を意味する。後者で使われる場合は納品日と同じ意味。納入日を過ぎれば遅延扱いで契約不履行となるが、納入日よりも前に納入することも通常は不可となる。

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