歩留まり損失の意味とは

2023年5月7日更新

歩留まりとは生産したもののうち良品の割合を示す言葉で、歩留まりが高い、あるいは良いと言われれば不良率が低い状態で製造ができている状態のことを意味しています。「歩留まり損失」「歩留まりロス」といった場合は、製造によって発生する不良やロスのことを意味しており、より厳密に言えば材料を投入してそれが完成品になるまでに発生するすべての損失を意味しています。

したがって、製造工程への投入材料と完成材料の差異が歩留まり損失であり、その発生個所や要因によっていくつかの種類に分かれます。

ただし、一般に歩留まりといった場合は、以下の2や3のことを意味しており、特に3についてだけ言及されていることもあります。この場合、歩留まり損失といった場合も同様で、単に製造上の不良品の割合のことを言っている場合もあれば、1や2も含めたことを言っている場合もあります。使用局面や相手の意図も含めて解釈する必要がありそうです。

1.設計上、技術上の制約によって発生する歩留まりロス

100を投入材料として用いても、はじめからその材料に使えない部位があるケースや、使用する部位が決まっているようなケースではそもそも投入材料と完成材料の間には差異が出ます。設計上、あるいは加工機などの製造技術上、必要な部分を選んで使わないと製造ができないケースです。この部分はどちらかというと原価の改善等で見ることがありますが、製造する上での歩留まりとは切り離して考えられていることが多いかもしれません。

例えば鋼板の打ち抜き加工を行うのであれば、板から打ち抜いた残りの材料は歩留まりロスとなります。

ただしこれは織り込み済みのロスであり、原価にも織り込まれているため、生産計画上には特に影響する要素ではありません。

2.製造工程上の歩留まりロス

特に不適合や不良などのトラブルが起きているわけではないのですが、製造指示書通りに製造ラインで生産を行っていても、材料のロスは発生します。

上述の技術的な要因と不可分になっている場合、区別が難しい部分ではありますが、不良品としてNGでロスするわけではなく、製造上廃棄したり、やり直しをする数量が一定数起きている場合のロスといえます。つまり、ロスすることがあらかじめ工程内でわかっている状態です。

100の材料を投入して実際に最終工程に入るのは98というようにわかっているケースが多く、生産計画の内数に織り込むことが可能なため、突発的に出荷可能な良品数が不足したというようなことにはなりません。

製造する側の改善によって利益率の改善につなげていける要素ですが、他社との話ではあまり俎上に上がることも無いかもしれません。

3.品質上の問題から発生する歩留まりロス

不良品ができてしまう場合に発生するものです。良品として完成品にまで仕上げたものの、検査によりNGとなってしまっている部分です。改善により低減可能なことが多いですが、製造するものによっては不良品が一定数発生することを見越して製造せざるを得ないものもあります。

この部分の歩留まり損失は生産計画に織り込みにくく、発生していると真っ先に改善しないといけない対象としてあがってきます。取引先が気にする不良率というのも、多くはこの部分の歩留まり損失のことを言っています。

ただし、製造における歩留まりの本質的な向上には上述の技術上、製造上の改善が欠かせません。

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