熱可塑性エラストマー(TPE)の物性と種類

2013年3月3日更新

熱可塑性エラストマーとはTPE(Thermo Plastic Elastomer)とも言われ、環境によってゴムであったりプラスチックであったりする性質を持つ樹脂のことです。弾性などの物性の上でも、ゴムとプラスチックの中間的な値を持ちます。TPEは熱で変形する性質を持つものの、ゴムと異なり、劣化しない点を特徴とします。具体的には常温ではゴム、高温ではプラスチックの性質を持つ物質ですが、ゴムとプラスチックの双方の性質を部分的に受け継いでいる中間的な材料とも言えます。

熱可塑性エラストマーは高温では流動性を持つため、ゴムやプラスチックとは異なる分子構造を持っています。端的に言えば、架橋構造がありません。このため、現場で熱溶着などによってその場で変形・加工ができるという特性もあります。

ゴムは加硫されたあとは、伸ばしたり、押したりした場合、元に戻ろうする性質を持ち、プラスチックは高温環境では流動性(可塑性)を持つため、型に入れたり流し込んだり、加工・成型が容易でプラスチックと同様の設備で加工が可能です。このため、TPEの製造では加硫工程がなく、実用上は樹脂を製造する機械が流用されることが多いです。ゴムの場合、配合を考えて練りの工程が必要となりますが、熱可塑性エラストマーはこうした必要もありません。ペレット状になった配合が完了したものを購入して、それを樹脂のように溶かして成型していくというプロセスです。ゴム製造などに必要な練り機やゴム練りのノウハウも不要となります。

TPEは基本的にハードセグメントとソフトセグメントの二つから構成されています。ソフトセグメントは弾性を付与するためのゴム成分であり、やわらかい性質を与える役割を持ち、ハードセグメントは高温では流動するものの、常温では変形を阻止する拘束的な役割を持ちます。平たく言えば、二つの樹脂材料を組み合わせることで成り立っている材料です。使う際には、これらに充填剤や軟化剤、状況に応じて酸化防止剤などが添加されることもあります。リサイクルが可能な材料でもあり、環境への負荷が少ない省エネ材料としての側面も注目されています。

現行の用途としては、ゴムの代替材料として提案されているケースが多く、ゴムが使われる部分(ゴムではなくてはならないものもありますが)は基本的にリサイクルが効かないため、低価格であるというコストメリットもあり、熱可塑性エラストマーの需要は伸びています。

TPEの利点(メリット)と欠点(デメリット)
TPEの利点(メリット) TPEの欠点(デメリット)
高温で流動性があるため、加工性、成型が容易。リサイクルが可能。省エネルギー。充填剤を入れなくとも強度がある。着色がしやすく、自由度が高い。ゴムと異なり練り工程が不要。樹脂の成型ができるなら導入可能。 耐熱性が低く、高いものでも120℃程度が限界。耐油性はどれもあまり高くはない。

熱可塑性エラストマー(TPE)の主な種類と材料記号

TPEの分類

TPEの種類と分類の一覧
TPEの大分類 詳細分類 ハードセグメント、ソフトセグメント
TPA(アミド系TPE) TPA-EE ソフトセグメントはエーテル及びエステルの両方の結合様式をもつもの
TPA-ES ソフトセグメントがポリエステルのもの
TPA-ET ソフトセグメントがポリエーテルのもの
TPC(エステル系TPE) TPC-EE ソフトセグメントは,エーテル及びエステルの両方の結合様式をもつもの。
TPC-ES ソフトセグメントがポリエステルのもの
TPC-ET ソフトセグメントがポリエーテルのもの
TPO(オレフィン系TPE) TPO-(EPDM+PP) エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体とポリプロピレンとのブレンドでEPDMの相は架橋点がないか又はほとんどなく、かつ、EPDMの量がPPよりも多いもの
TPS(スチレン系TPE) TPS-SBS スチレンとブタジエンとのブロック共重合体のもの
TPS-SEBS ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン
TPS-SEPS ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン
TPS-SIS スチレンとイソプレンとのブロック共重合体
TPU(ウレタン系TPE) TPU-ARES ハードセグメントは芳香族でソフトセグメントはポリエステルのもの
TPU-ARET ハードセグメントは芳香族でソフトセグメントはポリエーテルのもの/td>
TPU-AREE ハードセグメントは芳香族でソフトセグメントはエステル結合及びエーテル結合をもつもの
TPU-ARCE ハードセグメントは芳香族でソフトセグメントはポリカーボネートのもの
TPU-ARCL ハードセグメントは芳香族でソフトセグメントはポリカプロラクトンのもの
TPU-ALES ハードセグメントは脂肪族でソフトセグメントはポリエステルのもの
TPU-ALET ハードセグメントは脂肪族でソフトセグメントはポリエーテルのもの
TPV(動的加硫系TPE) TPV-(EPDM+PP) EPDM相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散した、EPDMとPPとの複合体のもの
TPV-(NBR+PP) アクリロニトリル−ブタジエンゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散した、NBRとPPとの複合体のもの
TPV-(NR+PP) 天然ゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散した、NRとPPとの複合体のもの
TPV-(ENR+PP) エポキシ化天然ゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散した、ENRとPPとの複合体のもの
TPV-(IIR+PP) ブチルゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散した、IIRとPPとの複合体のもの
TPZ(そのほかのTPE) TPZ-(NBR+PVC)など アクリロニトリル−ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド

スポンサーリンク

>このページ「熱可塑性エラストマー(TPE)の物性と種類」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

熱可塑性エラストマー(TPE)の物性と種類の関連記事とリンク

ゴムの種類と特性、物性について
プラスチックの種類と用途、特性
熱可塑性エラストマーの新旧の記号、略号の対照表
TPE(熱可塑性エラストマー)の耐熱温度
TPE(熱可塑性エラストマー)の比重

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集