耐熱ガラスと普通のガラスの違い|耐熱ガラスの耐熱温度はオーブンやレンジ、直火OKか

2019年9月9日更新

耐熱ガラスとは、急な加熱や冷却にもある程度耐える性能を持ったガラスで、普通ガラスであるソーダガラスや鉛ガラスとは成分が違います。熱に耐える性能、つまり耐熱性ということでみた場合、ガラスには常用使用温度と最高使用温度の二つの指標があります。短時間耐えることができる最高温度が最高使用温度ですが、常時使うことができる最高の温度というのが常用使用温度になります。日常使いではこの常用使用温度を目安に製品を選択することになります。

一方、冒頭で述べた急な加熱や冷却に耐える性能は、「熱衝撃耐性」や「耐ヒートショック」、「耐熱温度差」といった呼ばれ方で計測する指標です。

耐熱ガラスとは耐熱温度と熱衝撃の二つの指標で耐熱性能が決まる

耐熱ガラスの耐熱性を見る場合は、常用あるいは最高で「耐えることのできる温度」と、「急熱・急冷といった熱衝撃耐性」の二つの指標を見る必要があります。

というのも、ガラスというのは樹脂などに比べれば熱に強い素材ですが、高温と低温の差、つまり急な加熱や急令に弱い素材です。

ガラスは温度差でなぜ割れるか|ガラスの熱伝導率の低さ

ガラスは熱伝導率が低く、熱がなかなか伝わりにくい特徴があります。それゆえ高温で加熱した場合、熱が伝わっている部分と伝わっていない部分とに分かれてしまいます。

熱が伝わっている部分のガラス部位は膨張しますが、伝わっていない部分は膨張しておらず、その差によってガラスの内部の膨張した部分に内側から広がろうとする力、離れてみた場合、そのガラスの左右から「引っ張る力」が生まれます。これにより、ガラスにヒビが入ったり、割れたりといったことが起こります。

冷凍庫できんきんに冷やしたガラスに、熱湯を注ぐと割れるというのは、この急激な熱膨張によっておこる「引張る力」にガラスの組織が耐えられないために起きます。同様に、高温で加熱したあとのガラス容器を、冷水につけると一気に割れてしまうのも同じ理由です。熱に触れた部分だけに温度が伝わり、体積が広がるためです。

ガラスは温度差に弱い

つまり、ガラスは「熱が伝わりにくい」特性と「熱によって膨張する」という二つの性質を持つことから、温度差に弱い素材となっています。熱の伝わりやすさ、伝わりにくさは熱伝導率というパラメータで見ることができます。

下表に、ガラスの種類ごとの熱伝導率と、他の主な素材との比較を一覧表にまとめました。熱伝導率は、周囲の環境の温度によっても変わりますので、t/℃とあるのはどの温度での熱伝導率かを示したものです。常温とあるものは、常温での熱伝導率で、0〜100℃と記載があるものはこの温度帯域での熱伝導率の範囲を示しています。

耐熱ガラスと普通ガラス、金属の熱伝導率の違い
材料 温度条件(t/℃) 熱伝導率(k/(W・m-1・K-1))
ソーダガラス 常温 0.55-0.75
鉛ガラス 15℃ 0.6
耐熱ガラス(パイレックス) 30-75℃ 1.1
石英ガラス 0℃ 1.4
磁器 常温 1.5
アルミ 0〜100℃ 236〜240
炭素鋼 0〜100℃ 50〜48.5
ステンレス(SUS304相当) 0〜100℃ 15〜16.5
0〜100℃ 83.5〜72
0〜100℃ 428〜422

この表から見ての通り、ガラスはほかの材料と比べても、きわめて熱が伝わりにくい、熱伝導率の低い材料ということがわかります。火による温度を満遍なく均一に迅速にいきわたらせることが重要な鍋などに不向きな理由のひとつです。

このような熱伝導率の低いガラスを加熱すると、例えばガラスのコップの中でも熱が触れている部分と触れていない外側の部分に明確な温度の差異が出ます。時間がたてば外側にも温度が伝わりますが、高温に触れた場合でも触れていない部分にまではすぐには伝わらないので、高温になった部分だけが膨らんでしまいます。熱を受けて膨張する性質の度合いについては、線膨張率で比較検討することができます。

ガラスの熱膨張と引張強度

線膨張率は一般に温度が高くなるほど高くなっていきます。ガラスの線膨張率は下記の通り、他の素材と比べると低いですが、それでも膨張率が0ではないということは材料の中で熱に触れている部分の体積だけが膨張してしまうということです。ガラスの熱膨張率は他の素材と比べて高いわけではありませんが、熱が伝わりにくい以上、膨張する部分とそうではない部分にはっきり分かれてしまいます。

熱を受けたときにガラス内部では引張る力が発生する

ガラスが割れてしまうのは、この熱が触れている部分だけ膨張する点ほか、引張り強さにきわめて弱い材料であるという点が理由として挙げられます。ごく簡略化していえば、引張強度は、両端から材料をひっぱって、どれくらいの力で壊れるか、割れるかという指標ですが、ガラスの場合、30〜90MPaが引張強度の範囲で、耐熱ガラスであっても約50MPaが平均的な引張強度です。

これは炭素鋼の570MPaや、ステンレスの520MPa、アルミ合金の350Mpa、鋳鉄の450MPa、黄銅の280〜330MPaと比べてもかなり低い値で、金属材料の10分の1程度しかないことがわかります。

ガラスの圧縮強度は凡そ900MPaある点から比べると、引張る力に対して弱い材料であることがわかります。

ガラスに熱をかけると、その部分が膨張して外側に広がろうとしますので、左右から引張る力が発生し、熱が伝わりにくいので冷めている部分は膨張しないため、ひび割れにいたるというわけです。

耐熱ガラスと普通ガラス、磁器、金属の線膨張率の比較(α/10-6K-1
材料 温度条件 線膨張率
ガラス 0〜300℃ 8から10
鉛ガラス  0〜300℃ 8から9
耐熱ガラス(パイレックス) 0〜300℃ 2.8
石英ガラス(溶融石英)  0〜300℃ 0.4から0.55
磁器  0〜300℃ 2から6
炭素鋼 20℃ 10.7
ステンレス(SUS304相当) 20℃ 14.7

耐熱ガラスは熱膨張を抑えた素材

ガラスが熱によって割れるメカニズムは上記で見てきたとおり、「熱が伝わりにくい」「熱膨張はする」「引張強度が弱い」という三拍子がそろってしまうことが大きな理由です。

耐熱ガラスというのはこのうち、主として「熱膨張」を下げることで、温度差によるヒビ割れ・クラックの発生を改善したガラスとなります。具体的には、ガラスの主成分であるSiO2(二酸化ケイ素)に、B2O3(酸化ホウ素)を混ぜることで、熱膨張率を下げる工夫がなされたもので、JIS規格でも、ほうけい酸塩ガラス、アルミノけい酸塩ガラス、ガラスセラミックスなどの材質で作られたものと規定されています。

これは、熱伝導率を上げるガラスを作ることが困難なことと、ガラスの引張強度を上げることが困難でもあるため、耐熱ガラスの改良方向は熱膨張をいかに抑えるかという点に力点がかかっています。加えて、ガラスは硬脆材料といわれる材料であり、その名の通り、硬くて脆く、金属のように粘りがある素材ではありません。

ガラスは硬さは一般的な金属を凌駕するものの、引張り強さでは劣り、熱膨張もするという点が、熱衝撃の面ではデメリットになっています。

ガラスの耐熱温度

ガラスが温度差に弱い点は前述したとおりですが、では温度差がない環境ではどの程度の温度まで耐えられるのでしょうか。ガラスには常用使用温度、最高使用温度の違いがあると述べましたが、ガラスそのものが軟化してしまう点である軟化温度という点で見ると、以下のようになります。

耐熱プラスチック等に比べても高い温度まで軟化しないことがわかりますが、実用上は最高使用温度として低めの温度になりますので留意が必要です。料理や日常的に使用する場合は、熱がかかった瞬間からガラスの内部での温度差が生じるため、熱衝撃(耐熱温度差)を考慮せずに耐熱温度だけでガラスを選ぶことはできないのですが、この耐熱温度自体を超える環境では温度差以前に使うことができませんので、別の素材を検討する必要が出てきます。

ガラスの軟化温度|耐熱温度を見るための最高使用温度との比較
材料 軟化温度(最高使用温度)
ソーダガラス(普通ガラス) 550℃(最高使用温度380℃)
鉛ガラス  500℃
耐熱ガラス(パイレックス) 800℃
テンパックス 最高使用温度500℃
パイレックス:最高使用温度490℃
ネオセラム:最高使用温度700℃
石英ガラス 1600℃(最高使用温度1000℃)
磁器  1100℃〜1400℃

耐熱ガラスのグレード|直火用、天火用、熱湯用

ガラスが温度差に弱いため、耐熱ガラスは普通ガラスに比べてこの「温度差」に耐えられるように設計されていることは上述したとおりですが、この耐えられる温度差の程度によって耐熱ガラス製食器には、JIS規格にて、以下の三種が規定されています。

耐熱ガラス食器の定義としては、材質としては、ほうけい酸塩ガラス、アルミノけい酸塩ガラス、ガラスセラミックスなどの材質で作られたもので、熱膨張係数が65x10^-7℃^-1(0から300℃)以下のもの、と規定されています。

耐熱ガラスの熱衝撃強さ別の基準|直火OK、天火OK、熱湯OKの違い
耐熱用途の種類 呼び名 熱衝撃強さ 使用区分
直火用 超耐熱ガラス製 熱衝撃(耐熱温度差)400℃以上 加熱調理用などの目的で直接火炎に当てて用いられるもので、急激な加熱と冷却に耐えられるもの
直火用 耐熱ガラス製 熱衝撃(耐熱温度差)150℃以上 加熱調理用などの目的で直接火炎に当てて用いられるもの
天火用 耐熱ガラス製 熱衝撃(耐熱温度差)120℃以上 加熱調理用などの目的で直接火炎に当たらない用途に用いられるもの
熱湯用 耐熱ガラス製 熱衝撃(耐熱温度差)120℃以上 上記以外の目的で用いられるもので、熱湯程度の熱衝撃に対し十分耐えられるもの

熱衝撃(耐熱温度差)の温度というのは、熱衝撃試験にて「耐熱温度差」がある環境を実際に作り出して実施する温度です。400℃以上とあるのは、400℃以上の熱をかけるという意味ではなく、例えば450℃の恒温器に30分保持しておき、取り出してすぐに冷水(例えば15℃)に1分間浸して、ひびや割れの有無を調べる、というような試験です。この例の場合、450℃−15℃=435℃となり、熱衝撃がすでに400℃を超えています。この条件をクリアしているものであれば、直火用の超耐熱ガラス製ということができます。

耐熱ガラスはオーブン、レンジはOKか

耐熱ガラス容器の多くは、「天火用」の基準を満たしており、この場合、オーブンやレンジは使用可能OKの表示が一般的です。グラタンやココットなど直接火があたらない調理器であるオーブンやレンジでの調理を前提にしたメニューであれば、熱衝撃の温度差もそこまで高くならないと予測されます。

オーブンも機器の内部はかなりの高温になりますが、ポイントは調理する食材の入った耐熱ガラスの温度がどこまで上がるか、です。オーブンの最高温度までは上がりませんが、熱衝撃は120℃以上となっているため、オーブンから出した耐熱ガラス容器の温度しだいでは水につける等したり、急に冷やそうとすると割れる可能性があります。

天火用の規格をクリアしているものであれば、耐熱ガラス容器が120℃まで上がっていたとして、0℃の氷水に1分間つけてもひび割れはおきないという基準となります。

耐熱ガラスは直火OKか

耐熱ガラスで直火OKをうたっている製品はごくわずかです。鍋にそもそも向かない素材であることは、熱伝導率の低さの部分で説明したとおりですが、問題は鍋底の温度と、加熱直後に水などに触れる可能性がある点です。

火にかけた状態にある鍋底の温度がどこまで上がるかについては複数の先行研究がありますが、水が入った状態の鍋の場合、底の中心部分で105℃を少し超え、あとは横ばいの温度推移となることが知られています。ふたをした状態で、空焚きした場合、これが600℃を超えるあたりまで上昇します。ガスコンロの炎自体は、青い外炎部分で1400℃〜1500℃といわれていますが、この温度がそのまま鍋底の温度になるわけではありません。とはいえ、600℃前後に熱せられた鍋底が冷えれば、ガラスの熱は伝わりにくいため、大きな温度差が発生して、ガラス内部に引張応力が発生することになります。

JIS規格で直火OKとなる耐熱ガラスの最高水準のものは、超耐熱ガラスともいわれ、熱衝撃が400℃以上になりますが、600℃まで温度上昇した鍋底を例えば10℃の冷水につければ、熱衝撃は590℃となり、この基準を満たしていてもガラス鍋は割れる可能性があるということになります。

そもそもメジャーな耐熱ガラスであるパイレックスやテンパックスの最高使用温度が500℃前後であることから、空焚きに近い状態での調理の可能性があるなら使用は危険、ということになります。そうなるとネオセラムやバイコール、石英ガラスといった高価なガラスを使わざるを得ず、鍋としては高価になりすぎ、実用上のメリットがなくなります。

直火OKの耐熱ガラスとしては、直火用150℃以上の熱衝撃の規定の満たすものが大半ですが、JIS規格の規定の上でも試験上は加熱後にすぐに冷水につけるものの、これらは急冷にはそもそも耐えられるとの記載はないので、使用時には十分注意が必要です。また、その温度差から空焚きも困難で、使用する料理を選ぶ、といえます。

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