赤水の原因と対策

2022年5月6日更新

赤水とは水道から赤褐色の水が出てくる現象で、その原因は水道管の錆によるものです。赤水障害とも言います。水道管に使用されている鋼の部分が腐食して赤錆ができることで発生します。なお、青水の場合は銅管が錆びている場合に発生する現象です。地下水によってはマンガンが要因で黒い水が出ることがあり、これは黒水とも呼ばれます。

赤水は鋼管が使われていれば発生の可能性

昨今は水道管も炭素鋼由来のものからVP管(塩ビ管)やHIVP管(耐震性能の観点から塩ビ管に耐衝撃性能を付与したもの)、ポリエチレン管等に置き換わりつつありますが、給水や給湯配管としては水道用亜鉛メッキ鋼管が長いこと使われているため、配水系統のどこかで使われていると、同様の現象に見舞われることがあります。

ビルやマンション等では容易に置き換わりが難しい事情もあり、未だこの現象が散見されることがあります。特にオフィス街の古いビルの休日明けは、休み中に鋼管内部に停滞している水によって鉄イオン濃度が高まって赤水が見られることがあります。

腐食や錆は条件さえ整えれば、コントロールできる部分も多いですが、鋼管は半永久的に腐食とは無縁というものではなく、耐用年数はおおよそ40年程度とも言われます。メンテや交換がいずれは必要となる資材として考えておく必要があります。

水道管の錆を防ぐ仕組み

水道に使われる鋼管は水の接する部分に亜鉛メッキでコーティングされており、これが消失しない限り、鋼の部分は錆びません。ただ亜鉛めっきの耐久力というのは様々な要因に左右される不確定な要素が多いもので、特に、pHや水の流速、間欠通水等の影響を受けます。

特にpHが低い酸性の水だと亜鉛メッキはより早くなくなっていきます。そもそも亜鉛メッキ自体が犠牲防食と言い、自らが先に腐食することでコーティングしている対象の鉄材を守るタイプのものです(とはいえ、亜鉛めっきの腐食速度は0.02〜0.04mm/y)。例えばこれは遊離炭酸を多く含む伏流水や地下水を水源とする地域で顕著にみられます。

水質についてもカルシウム濃度が低い水、つまり軟水のほうが鉄の溶解は増大する研究結果が出ています。亜鉛メッキ鋼管はもともと硬水に適した給水管なのですが、軟水が一般的な日本では特に相性が悪いため、樹脂で鋼部分をコーティングした樹脂ライニング鋼管(塩化ビニルライニング鋼管)や銅管、ステンレス鋼管のほうが防錆の面からは適しています。

鉄の濃度が0.3 mg/Lを超えると水が着色していきますので、めっきが消失しているかどうか、腐食がどの程度進んでいるかどうかは水の色がひとつの判断材料となります。

赤水の対策

根本対策としては発生している箇所を特定して、その部分の亜鉛めっき鋼管を樹脂管や樹脂ライニング鋼管(被膜が不十分で鋼が水に露出する環境になっていると同様に赤水の要因となります)、銅管、ステンレス管等に配管自体を交換してしまうことになりますが、以下に赤水の主要対策方法についてまとめます。

赤水の対策例
対策方法 内容
ポリリン酸塩を注入する方法 赤色化を消失させる効果がある薬剤。ただし飲用に投入するのは抵抗があり、なかなか進まない。炭酸カルシウムのスケール防止効果もある。
オルトリン酸を注入する方法 この薬剤を投入すると配管からの亜鉛イオンや鉛イオンの溶出を抑える効果も期待できる。
ケイ酸塩を注入する方法 ポリリン酸塩と同様の赤水防止薬剤として使われることがある。
ライニング管更正工法 水道用の亜鉛メッキ鋼管の内面に発生した錆を除去したあと、あらためて塗装を行い、腐食を防止する技法。つまり内側だけライニング管に変えてしまうというもの。ただし錆の除去が難しいのと、ライニングに使う塗膜から溶剤が流れ出ることがある。
脱気処理 フィルターとなる中空糸に水道水を流して外部から真空引きをすると酸素が除去される。これにより高い脱酸素効率を実現し、錆の発生要因となる酸素の減らしてしまうという発想の技法。
カソード防食法 配管の内部に不溶性の電極を挿入して配管の内面をカソード(陰極)になるよう直流通電する電気防食の技法。配管への電極設置が難点となる。
カルシウム防錆工法 消石灰を水に溶かすとアルカリ性になりpHが高くなる。このときのpHの上澄み液だけを給水に注入してpHを高めることで亜鉛めっきの消失を抑えて防錆するという発想の工法。水質の管理が難しいという難点はある。

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