刃こぼれした場合、砥石の番手はどれくらいがよいか

2024年1月21日更新

砥石の番手(読み方:ばんて)は数字が小さいものほど粗くなりますので刃こぼれの程度がひどいものほど粗いものから使い、順に番手の数字が大きいもの(粒度が細かいもの)に変えていくのが切れ味がよく美しい刃に仕上げるコツです。

刃こぼれした場合、砥石の番手はどれくらいがよいか|目次
  1. 番手の幅
  2. 粗いものから順に使用していく
  3. 研ぎはワークを削っていくこと

番手の幅

番手の数字は、砥石に入っている削る機能を持つ粒の大きさを表わしています。シャープ(#)の後に続けて書いてある数字が「番手」であり、正式には粒度(読み方:りゅうど)といいます。ダイヤモンド等超砥粒の場合、工業的には番手#16から#400までをメッシュサイズ、#500から#240000までをミクロンサイズといいます。一般砥粒であるアルミナ系の砥粒(A砥粒、WA等)、炭化ケイ素SiCを主体とする(C砥粒、GC等)の場合は、220番までの粗粒と、230番から1200番までの一般研磨用微粉、240番から8000番までの精密研磨用の微粉に分かれています。

番手の間隔としては下表の規格(粗粒と一般研磨用は番手表記を#のかわりにFと記載する場合があります)となりますが、市販されているものはここまで細かい分類になっているわけではないので、入手しやすいものを選んでいきます(砥石メーカーは砥粒さえあればすべて作れます。また、これにはない粒度も作ることができますが、工業用途が基本で市販用の砥石の場合は、あまり高度なカスタマイズができません)

番手のバリエーション
種別 番手
一般砥粒の番手 粗粒:#4、#5、#6、#7、#8、#10、#12、#14、#16、#20、#22、#24、#30、#36、#40、#46、#54、#60、#70、#80、#90、#100、#120、#150、#180、#220
一般研磨用:#230、#240、#280、#320、#360、#400、#500、#600、#800、#1000、#1200
精密研磨用:#240、#280 、#320 、#360 、#400 、#500 、#600 、#700 、#800 、#1000 、#1200 、#1500 、#2000 、#2500 、#3000 、#4000 、#6000 、#8000
ダイヤモンド砥粒の番手 メッシュサイズ:#16、#18、#20、#30、#40、#50、#60、#80、#100、#120、#140、#170、#200、#230、#270、#325
ミクロンサイズ:#500、#600、#700、#800、#1000、#1200、#1500、#2000、#3000、#4000、#8000、#14000、#60000、#100000、#240000

粗いものから順に使用していく

刃物を研ぐ場合、おおむね荒砥石、中砥石、仕上げ砥石の3種の砥石を順番に使うか、どれが1つまたは2つを組わせて使うことが多いです。それぞれに設定されている番手に幅がありますが、明確な規定はありませんので商習慣や各メーカーによるものです。加えて人造砥石ではなく天然砥石を使用する場合、番手には同じ種類の砥石でもムラがあります。

刃こぼれ時の番手の組み合わせ例
砥石の種別 番手の組み合わせ例
一般砥石 荒砥石(#120)→荒砥石(#400)→中砥石(#1000)
一般砥石 荒砥石(#220)→荒砥石(#400)→中砥石(#1000)
一般砥石 荒砥石(#320)→中砥石(#1000)→仕上げ砥石(#3000)
一般砥石 荒砥石(#400)→中砥石(#1000)
一般砥石 荒砥石(#400)→中砥石(#1000)→仕上げ砥石(#3000)
ダイヤモンド砥石 #400→#1000
ダイヤモンド砥石 #1000→#3000

一般に、荒砥石の番手は#400程度までのものをいいます。市販品では粗くても120番程度のものがもっとも粗いものです。工業用のダイヤモンドであれば下は#16から規格がありますが、これを刃物に使用することは稀です。研磨というより本当にワークを削り取るような加工に使用します。 中砥石は番手1000前後のものですが、#600から#2000前後とこちらも幅があります。番手を一つしか使わないという場合は中砥石のみというケースが多いかと思います。

仕上げ砥石は繊細な切れ味や見た目も重視する場合には重宝されるもので一般には#3000を超えるものをいいます。ただし削り取る力は弱いので、刃こぼれに対して仕上げ砥石だけを使っているといつまでたっても刃こぼれが消えないということになります。仕上げ砥石の上には超仕上げといわれる#8000を超えるものもありますが、これらは工業用途での使用が多いものです。

研ぎはワークを削っていくこと

日々の刃物のメンテナンスには、仕上げ砥石や中砥石をどちらかだけ使うという方法が簡便であり、これだけでも十分ですが、刃こぼれが出始めているものは粗い砥粒を持つ粗砥石で刃の先端を大きく削り取ってやる必要があります。番手の大小はシンプルに見れば、削り取る大きさとなります。

砥石には砥粒といわれるワークを削り取る機能を持つ「粒」がたくさん入っています。これはアルミナであったり、炭化ケイ素であったり、ダイヤモンドであったりしますが、これらの砥粒でワークの表面を削っていくことになりますので、番手と番手の間は開きすぎてもよくありませんし、近すぎても効果があまりありません。

番手が小さいとそれだけ深い傷をワークに残しますので、そこから急激に大きな番手(細かい番手)を使っても、最初についた深い溝や凹凸をならしきれません。近すぎると、今度は手間ばかりかかるわりにはなかなか研磨が進まなくなります。

工業用途で金属の表面に光沢を出したり、鏡面に仕上げたいという場合は、開始するワークの状態にもよりますが、粗い番手から仕上げに使う細かい番手、バフといった具合に何段階もの研磨工程を実施することが多いですが、手作業主体での刃物の研ぎの場合、多くても3工程程度に抑えたいところです。

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