酸化セリウム(CeO2)はどのような材料の研磨に使われますか。

2010年9月28日更新

ガラス素材の仕上げには酸化セリウム

酸化セリウムが最もよく使われる材料としては、ガラスが挙げられると思います。ガラスの研磨では、複数の工程を経て最終的に酸化セリウムを砥材として用いた研磨材がよく使われますが、これはガラスの仕上げ工程で要求される面精度を実現するのにダイヤモンドでは「鏡面」が出にくく、コストもかかりすぎてしまうことと関係しています。

液体などに砥粒を混ぜ込んだいわゆる液体研磨材は、ラップでの研磨工程などを見ればわかる通り、面精度の高い表面を、ある程度の面積にわたって要求される際によく使われます。これらの研磨メカニズムは、固定砥粒とは異なり、砥材自体が加工対象に切り込む深さを浅めにすることができます。これはボンドが常に削られていかないと(自生発刃が起こらないと)研磨自体が成り立たない固定砥粒と大きく異なる点です。切りくずで目詰まりする、目こぼれ、目つぶれといった現象が遊離砥粒の研磨材では問題とならず(砥粒の破砕性は見る必要がありますが)、非常にやわらかいフェルトなどのパッドで低圧の条件をかけてやれば、細かい砥粒でほんのわずかしか切り込んでいない状態での研磨が実現可能です。これが仕上げに向いていると言われる所以です。ガラスについては幅広く使われ、ハードディスクの基板やフォトマスク基板でも使われます。光学レンズ、プリズムにも欠かせない生産材の一つと言えます。

また酸化セリウムは、アルミナや炭化ケイ素とは違った破砕挙動をし、砥粒自体の形状や寸法も仕上げ向きにデザインされていることが多いと言えます。またラッピングやポリッシングでも粒度を分けた複数の工程が必要なケースもあります。こうした場合にも、粒度を変えることで、幅広い要求精度に応えることができると言えます。

代替材料の検討も

上記のような使い方のほか、レジン系のボンドに酸化セリウムをまぜこんだ砥石もあれば、酸化セリウム自体をコンパウンドのように固めて、固定砥粒として使う場合もあります。ガラスの最終仕上げではやはり遊離砥粒として用いる酸化セリウムが最もよく使われていると言えます。ただ、この酸化セリウムは原料のほとんどを中国に依存しており、国際間の問題や投機筋の動きによっては価格が乱高下することがあります。大量に用いる場合は、加工コストもこれらの影響をダイレクトに受けるため、代替品の検討も一部で進んでいます。具体的には、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などを酸化セリウムの代替品として用いる研究等が発表されています。

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