内作と外作のメリット、デメリット比較

2021年3月21日更新

内作とは「ないさく」と読み、自社内で製造する物品のことで、外作(がいさく)とはその反対に社外で製造する物品のことを意味しています。製造業でよく使われる表現ですが、業界や会社によってその区分や分け方にはかなり違いがあります。なお、英語では下表のように使い分けられています。

内作と外作の区分ごとの英語表現の違い
日本語 英語
内作、内製 internal production, internal manufacturing, in-house manufacturing
外作、外製 external manufacturing, external production, oursource manufacturing
内製化 insourcing, self-manufacture
外製化 oursourcing

以下、自動車部品の業界を例にして内作、外作のメリット、デメリットについてみていきます。

商社や販社であれば、販売する物品は基本的に仕入れたものを転売することがメインになりますが(一部原料から販売まで一貫して実施している業態をとっているところもありますが)、製造業の場合は自社で製造するものと、他社で製造したものを仕入れて販売するもの、他社へ製造委託してそれを仕入れて販売するものとに分かれています。

製造業においては原材料から部品に至るまで自社の製品を作るのにすべてを自社内で完結できるものはほぼありませんので、必ず部材を仕入れてそれを使って製品を製造することになります。こうした意味で、内作とはすべての部材や工程を社内で行っているということを意味しているわけではなく、基本的には主要な製造工程を社内で行い、自社で出荷処理(売上処理)を行うものを内作として定義していることが多いです。相手先ブランドで生産を行うOEMへ自社品の生産を委託するのも一種の外作となります。

このとき、最終的な生産工程を自社で行っている場合に内作と呼ぶのか、どこまでの工程を自社内で行っていたら内作として分類できるかについては、各社で違いがあります。

製造業=自社で製造したものだけを売る、という図式が完全に成り立っているところばかりではなく、業態にもよりますが規模が大きくなるほど、外作をうまく活用して低コストでの生産を行っています。原則、自社内で作るものは高い付加価値が見込めるものであったり、技術・ノウハウの面から社外への開示が困難なものであったり、設備面からもそれなりの生産規模を持たないと難しいものであったりと、生産する物品も選択と集中を行う傾向があります。

というのも日本の多くの製造業は規模が大きくほどに生産も高コストになるためです。また取り扱う製品の品種が多いほど、すべてが高付加価値品というわけでもなくとにかく製造原価を下げないことには利益が見込めないものもあります。

内作と外作のメリット、デメリットの比較
製造場所 メリット デメリット
内作
  • 原価低減活動や改善活動などで利益が出た分はすべて自社の儲けになる
  • 自社の製造技術、生産技術のノウハウを余すところなく投入できる。総じて製造レベル、品質レベルが高い。
  • 難しい製品や先進的な製造方法などを試しやすい
  • 生産効率を上げるだけ自社の利益になる
  • 設備トラブルやドカ不良等が起きた際など万が一の場合に融通が利く
  • 設備改造やジグ改造など特急対応が必要なケースの対応力が高い
  • 自社の方針を反映させやすい
  • 社内であるため、他工場がピンチになった場合に応援に入りやすい
  • コストが高くなりがちである
  • 設備投資が必要
  • 工場の面積や人員には限りがあるため、何でもかんでも設備投資するわけにはいかず取捨選択が要る
  • 自社の製造部門の発言権が強い場合、市場・顧客要望に応えられないことがある
  • 製造部門と営業部門との力関係によっては営業(顧客)要望をきいてもらえない
  • 社内ルールに則る必要があり、分野によっては機動力や臨機応変の対応が必要な場合に後手に回ることがある
  • 関わる部署が複数部門にまたがるため、外作と交渉するよりも調整力が求められることがある
  • 規模や単価など受注に条件があり、小回りがきかないケースがある
  • 在庫コストは社内負担となる
  • 受注数の変動で余剰人員が発生したり、逆に人手不足になった場合の手当てを自社で行う必要がある
  • しくじった場合の損害金額が大きくなる
外作
  • 価格競争力がある仕入先に委託できる
  • 自社で作るよりも生産コストが低くなるため、製品種によっては利益が多く見込める
  • 発注元との力関係により自社の製造部門よりも融通が利くケースもある
  • 複数の仕入先と取引がある場合、BCPの観点から災害時に他の仕入先でバックアップ生産可能な場合がある
  • 仕入単価にすべて反映されているため、製品の保管・在庫コスト、受注数変動に伴う人員手配などのコストも自社で一切見なくてよい。
  • 雇用人員の労働条件なども考える必要がない
  • 契約条件にもよるが設備投資のコストやリスクを負う必要がない
  • 下請事業者に製造委託する場合、下請法の制約を受ける
  • 取引形態によっては一部社内の製造ノウハウ・技術情報が流出・漏れてしまうことがある
  • 使用する部材については有償支給取引を行う必要があり、これらのやり取りが煩雑
  • 契約の範囲内の取引であるため、本当に困ったときやピンチの時には融通が利かない
  • 自社内の製造部門に比べると製造ノウハウ・製造技術に劣り、未知のトラブルや品質トラブルに弱い
  • 納期意識やプロ意識、品質レベルが低い取引先もある
  • 品質管理・指導を念入りに行う必要がある
  • 品質問題発生時の対応力が弱いケースがある
 

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