ムキ材(無規材)とは

2021年5月30日更新

鉄鋼分野で使われる「ムキ材」は漢字で書くと無規材、つまり「無規格」の材料であることを意味しています。鋼材には、含有成分や強度などの「規格」が定められており、SS400にしてもSPHC、SPCC、SN400にしても、鉄鋼材料の種類によってその基準をクリアしている必要があり、その基準を満たしていることを証明するミルシート(鋼材検査証明書)がついています。

何らかの事情でこのミルシートがつけられないものが総称して「ムキ材」と呼ばれています。「鉄ならなんでもいいや」という場合には、通常の規格材に比べて価格が安くなりますので、ムキ材が使われることがあります。

ただし工業製品や部品にはほぼ使用されることはありません。成分や強度の保証がなければ、安全な製品を作ることもできないためです。そもそもムキ材の場合、いろいろなケースで無規格になっているので、品質のあたりをつけることもできません。

ムキ材となってしまうのは、例えば以下のようなケースです。

  • 流通や在庫の過程で複数の材料が混ざってしまい、何の材料か分からなくなってしまった(SS400かSPHCかSPCCか・・・あるいは別種の材料か)
  • そもそも規格に入らなかったNG品

購入後自分たちで分析という方法はコストがかかるのであまり現実的ではなく、文字通り、鉄であればどのような材料でもよいというような場合しか使うことはできないですが、用途によっては意外にこの需要があります。とにかく安い鉄がすぐほしいというような場合に重宝します。

鉄鋼材料のおおもとの生産は高炉を保有する製鉄所で行われるため、「無規格」というのはおかしな話に聞こえるかもしれませんが、鉄鋼材の商取引のように独特の商慣習を持ち複雑で間に多数の会社が入る場合は、それぞれの取引先でどのように在庫が扱われるかまちまちです。

特に最初に作られた製鉄所では非常に大きな単位で母材があがってきますので、それがそのままユーザーに行くというのは大口の顧客向けで、途中で様々なサイズにカットされて流通します。

当初は規格があったが途中で何かわからなくなったものや、規格に入っていないものが何らかの事情で流れてきた、という材料が生まれる所以です。

なお、ムキ材の場合、どこの国の高炉メーカーかも当然わかりませんし、もともとが何らかの規格保証があった材料なのか、品質NG品なのかもわからないものとなります。

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