鋼板やロール材における市中材とは

2022年4月10日更新

鉄鋼材料はコイル材、ロール材、板材など種々の形態で取引されていますが、このうち市中材(読み方:しちゅうざい)とはすでに鋼材メーカーから特定の使用者向けではなく、商社を介して販売店やユーザー等に流通している材料のことを意味しています。市中(マーケット)にすでに出回っている材料を意味していることから、市中材という言い方がなされます。

鋼材の取引形態というのは独特な世界と商慣習があり、製品を製造して供給するおおもとの鋼材メーカーが出荷する時点ですでにどこのメーカーが使うのか決まっているものを「紐付き(ひもつき)」の販売と呼び、反対にユーザーが決まっていないものを「店売り(みせうり)」の販売と呼称する習慣があります。市中材というのは、この後者の店売りのものです。

毎月決まった量の需要が決まっている鋼材の場合、鋼材商社はそのユーザー向けに在庫として確保しておくことが一般的ですが、そうではない場合、その取引ネットワークを活かして、自身の顧客から購入希望の連絡があるたびに市中材を探して調達してきます。このため、市中材の入手ができるリードタイムは毎回異なることが多く、毎月一定量の使用があるという場合は、かなり前もって依頼しておく必要があります。急に無くなったので市中材をという場合ですぐに材料が見つかればよいですが、そうではないこともあり、その場合材料切れで生産できないという事態にもなりかねません。

また、商社が市中材を調達する場合、自身の顧客向けに本来供給すべきスペックの鋼材とまったく同一かどうかを鋼材メーカーへ確認する目的で、転用許可申請というようなものが必要となります。つまり、もともとAというスペックの鋼材を顧客に納品していますが、市中材でそれを供給する場合、手に入れる予定の市中材がAというスペックのものと同等であり、転用可のものであるというお墨付きを鋼材メーカーからもらう必要があります。これにも時間がかかりますので、毎月一定量在庫運用している鋼材と比べて発注から入荷までのリードタイムがかなり変わってきます。

ものを生産するときには材料の在庫がここまで下がったら補充発注しておくという発注点を設けていることが多々ありますが、このような市中材からの供給となっている場合、商社が母材を在庫している取引とリードタイムは別物と考えて検討しておくほうが良いといえます。

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