切削と研削の違いについて

2009年9月14日更新

バイトやカンナなどで工作物の表面を切削する場合、刃と切りくずとの間の角度である「すくい角」は通常90度を超えず、プラスになっています。反対に、砥石をはじめとする研削工具を用いた場合、工作物を削り取る砥粒と切りくずの間は90度を超え、マイナスを示します。

一般に切れ味はすくい角の大きさ(正方向)に比例しますので、研削は切削に比べて切れ味が劣ることがわかります。また、切削や研削の時に砥粒と工作物との間にかかる力は、背分力と主分力にわけることができます。背分力とは、工具を逃がしたり、加工対象を直接的に変形させる力のことですが、これに摩擦係数をかけると摩擦力になります。この背文力は研削のほうが大きく、研削の多くの問題は熱に起因するとまでいわれるほど、摩擦熱が発生し、砥粒や工作物を損傷させます。この研削熱を除去したり、なるべく発生量を抑えるためにクーラントが用いられたり、砥石のスペックの見直しが行われたりしますが、こうしたことから熱的損傷の発生頻度は切削よりも研削加工のほうが多いといえます。

「研削焼け」はなぜ起きるか

研削焼けと言われる現象もその問題の一つですが、これは高温による加工対象表面の変質、詳しくいえば高温で発生した酸化膜によるものです。摩耗や疲労破壊などの要因となり得るため、避けたい現象の一つです。

切削は刃がそのまま加工対象を削り取っていく加工方法ですが、研削も原理的には同じといえます。ただ刃の形態や数、加工時の挙動が異なるため、両者には大きな違いが出てくるわけです。

摩擦熱の問題は、工具と加工対象との接触面積にも大きく影響します。砥石による研削や研磨加工は、切削に比べて接触面積が広くなるため、より熱ダメージを受ける機会も多くなります。また同じ研削といっても、内面研削、平面研削、円筒研削でも接触面積(回転タイプの砥石は円形なので、通常「接触弧」の長さですが)は異なります。同じ幅・外径の砥石を使ったとして、接触部分が一番大きくなるのが内面研削、次に平面研削、そして円と円が接触するタイプの円筒研削になります。

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