自動車のシムとスペーサーの違いとは

2022年2月14日更新

車の分野で使われるシム(sim)やスペーサーは部品と部品の間に発生する隙間に挟み込んで使用することで、その隙間をなくしたり、位置の精度を調整したり、部品同士をより密着させ滑りを防止してきちんと摩擦力が発生するようにしたりといった目的を実現するための部品です。

自動車のシムとスペーサーの違いとは|目次
  1. ワッシャーとの違い
  2. 図面に記載なし?
  3. 材質と形状、性能

ワッシャーとの違い

ワッシャーとも似ており違いがわかりにくいですが、ワッシャーのほうは目的がねじやボルトが相手側にめり込みすぎないようにしたり、ゆるみ止めや締結時の力がうまく分散するようにしたり、といったボルトや締結時の性能維持・向上に特化したものとなります。

対してシムは単に隙間に挟むものの総称と言えるため、位置決めだけでなく単に隙間を埋めるという用途であれば、どのようなものでも呼称することができます。ただし、用途に特化した名称があるならそちらを使うほうが誤解が生じませんのでそのほうが良いかと思います。

スペーサーもシムと隙間に挟んで位置を調整するという点で同じ用途ですが、両者の違いは、部品の持つ厚みです。シムが1ミリにも満たない極薄の部品を指すのに対し、スペーサーはそれよりも厚い部品のことを指しますが、本質的な意味は変わりません。

図面に記載なし?

シムもスペーサーもどちらも元から製品の一部として組み込まれている場合と、調整のために現場であとから追加されるものの2系統があります。

前者の場合は図面に記載されますが、後者の場合はメンテナンス等を実施する場合に、作業者の判断で使用されることが多く、例えば車検等の際に補修部品を入れ替えるという措置を行う場合に、整備工場でシムやスペーサーを挟み込んで位置を調整して車に部品を取り付けるというような使い方がされます。このため、図面に記載はなくどのようなものを使うかも使用者側で判断されますが、使用することで錆を誘発したり、摩擦力が低減することで不具合が生じるといった点がないものを選定する必要があります。

一般にはシムやスペーサーは図面に記載がなく作業現場の判断で追加される部品の意味で使われることが多いです。

材質と形状、性能

シムやスペーサーはワッシャーのような穴のあいた形状のものから、板上のもの、円形のもの等各種のサイズと形、材質があります。というのも、シムの本質的な役割が隙間に挟んで位置を調整するというものであるため、部品と部品の隙間に入り、はみ出さない形状というのがひとつの要件になります。このため、現場でシート状のものをそのままカットして使うということもあります。

材質は鋼板の薄板を加工したものが多いですが、用途によってSUSを使用したり、あるいはゴムやプラスチックを使用することもあります。部品と部品の間に挟むため、部品材質との相性が考慮されます。ゴムシート状のものだとシートを所与の形状に打ち抜いて使ったり、適宜、現場で使いやすい大きさに切って使うこともあります。ものによっては、自動車の補修部品とセットになっていることもあります。

一般にシムプレートやシム板といった場合、鋼板を材質とする金属製のシムを意味しています。金属製の場合は、接触する金属と電位差がある金属などを使うともらい錆等につながることもあり、材質の組み合わせには注意が必要です。

単に位置を調整するというような場合は、嵩を上げるために使うのでそれ以外の作用がない箇所に使いますが、回転する部分や摺動部分として使うのはどちらかというと元から図面に記載がある場合です。

例えば、回転することで動力を伝えるような用途の場合、摩擦力を高めるシムを間に挟み込むことで部品同士が滑ることを防ぎ、さらに効率的に動力を伝えることができるようになります。

こうした箇所は部品同士の接合面に滑りが発生することで不具合や事故につながることもあり、それを防ぐためにスペーサーやシムを挟み込んで調整するという用途であれば、元から図面に入るため、部品交換の際もこれらもセットで交換するということになります。

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