図面での公差の書き方|寸法公差の表記と見方について

2020年2月2日更新

図面に記載されている公差(こうさ)とは、指定した寸法に対してどれくらいのズレが許されるか、その上限と下限の差を示したものです。公差と寸法公差は同じ意味です。図面での公差の書き方、見方には決まったルールがありますので、以下に見ていきます。

寸法公差の意味

図面での公差表記方法を見ていく前に、基本的な部分をおさらいしておきます。そもそも公差とは何を意味するのでしょうか。

たとえば、図面に100mmと記載されている箇所があり、この部分の公差が100±0.3となっているとします。

この場合、この箇所は、100.3mm〜99.7mmの間におさまるように仕上げて欲しいという意味となります。

プラスのほうを最大許容寸法、マイナスのほうを最小許容寸法と呼び、最大許容寸法−最小許容寸法=寸法公差となります。この例で言えば、100±0.3なので、100.3 - 99.7 = 0.6mmが寸法公差となります。図面の指示上、許されるズレの幅が0.6mmであるということになります。

公差はコストに直結する

公差はどんなものにも存在しますが、それは、例えば上記の例で言えば、100.00000mmのものを仕上げるというのは極めて困難であり、よしんばできたとしても、非常にコストと労力がかかります。今もっている設備では、加工はおろか、測定すらできないかもしれません。

そもそも、それだけのピンポイントでの精度がその部品なり製品なりに必要なのか、ということにもなります。機能上のスペックを満たすことができれば、あとはコストや価格をいかに安くできるかというのはどんなメーカーでも至上命題となる事柄です。公差を指定する際は、性能としてそこまで必要なのかよくよく考えて指定する必要があります。

公差の表記方法

話が少しそれましたが、寸法公差の表記方法にはいくつかルールがあります。図面の該当箇所に直接記入する場合、以下のような表記方法になりますので、この見方を覚えておくと何かと便利です。

上限、下限が同じ値の公差の書き方

100 ±0.3

指定された寸法に対し、上限と下限が同じ値だけ上下にふれています。この場合、最大許容寸法100.3から最小許容寸法99.7の間におさまっていればよいということになります。なお、上限と下限で同じ値を指定する場合は、以下の例にように二段にわけて書かず、±でつなぐ決まりになっています。

上限、下限が異なる場合の公差の書き方

  +0.3
100 -0.5

図面表記の寸法に対して、上限と下限で許容される幅の大きさが異なるケースです。上限は、100.3mmで先の例と同じですが、下限は99.5mmとなり、少し許容される幅が広くなります。図面にこのように書かれている場合は、100.3mmから99.5mmの間に寸法が入っていればよい、ということになります。

下限が0の場合の公差の書き方

  +0.3
100 0

上記までの例では、上限、下限ともに数値が入っていましたが、この例では下限が0となっています。つまり、100mmより小さい値は許容できない、という指定です。最大許容寸法が100.3mmで、最小許容寸法は100mmジャストです。この範囲に寸法が入っていれば合格ということになりますので、100mmを下回る、例えば99.9mmであった場合は不合格となり、図面の要求を満たせないことになります。

なお、0の前にはマイナスやプラスなどの記号はつけない決まりになっています。

上限が0の場合の公差の書き方

  0
100 -0.3

上記とは反対のケースです。最大許容寸法が100mmなので、100.1mmのものはNGとなります。最小許容寸法は99.7mmとなるので、100〜99.7の範囲に寸法をおさめる必要があります。

上限と下限が双方プラスの公差の書き方

  +0.2
100 +0.1

上限と下限が指定された寸法よりも両方ともにプラス目になっているケースです。この場合、許される最大が100.2、最小が100.1となりますので、寸法は100.1〜100.2におさまるよう加工してくださいということになります。

上限と下限が双方マイナスの公差の書き方

  -0.1
100 -0.2

上限と下限がともに指定された寸法よりもマイナスとなるケースで、この場合、最大許容寸法99.9となり、最小は99.8となります。したがって、寸法は99.8から99.9におさまっている必要があります。

なお、公差の表記ルールにはいくつかの注意点があります。上段と下段に上限、下限を分けて書く場合、下の段にはより小さくなる寸法がくるようにします。

図面上の長さを示す値は基本mm(ミリ)が単位となっているため、基準となる指定寸法と公差も共に同じmm単位での表記となりますが、角度の場合は、度(°)のほかに分(')と秒(")を状況によって使うことができます。このため、角度公差の表記にも度や秒を使う場合があります。

角度の公差の書き方

  +0.1°
100° -0.2°

このように、単位を同じ°に統一して表記する方法が最も多く見られます。

角度公差に分を使っての書き方

100° ±0°10'
100° ±1°10'

1°(1度)は60'(60分)となりますので、上記のように°に統一できない場合は、分を使って公差指定することも可能です。

寸法公差の桁数

寸法公差に使用する桁数は、設計者が独自に設定しますが、桁数を変えるということは、有効数字が変わってくるということであり、一見同じ公差にみえますが、最小値と最大値自体が変わってきます。

これは数値を決める際、四捨五入により値が変わってしまうために起きることで、精度がシビアな場合、死活問題になることがあります。

以下に、事例を見てみます。

公差に0.3と0.30を指定した場合とで比較してみます。

寸法公差の桁数違いによる有効数字の違い
100±0.3 100±0.30
99.7から100.3が公差の範囲ですが、小数点以下2桁まで実測した場合、99.65から100.34までが合格範囲となります。したがって、99.65が99.7とみなされます。同様に、100.3を超えてしまいますが、100.34も検査の上では合格値となります。 99.70から100.30が公差の範囲となり、小数点以下3桁まで実測した場合、99.695から100.304までが合格範囲となります。±0.3の最小値であった99.65では不合格となります。同様に100.34の場合も、100.304を超えてしまっており、この公差を満たすことができず不合格となります。

すべての公差を±で表記しないのはなぜか

下記の2つの公差指示では、どちらも最小が100.1mmとなり、最大が100.3となります。つまり、許容される公差の値が同じになります。

  +0.3
100 +0.1
100.2 ±0.1

上記のような場合、どちらを使うべきか、という問題があります。またそもそも寸法公差はすべて±で表記しておけば、2行にわけて公差を表記する必要がなくシンプルです。

これをあえて2行で分ける意味は、はめあわせの関係にある部品同士の寸法表記を事例に考えるとわかりやすいです。

互いにはまりあう部品や接続する部位については、基準寸法を同じに表記することで、はめあいとなることがわかりやすくなります。

例えば穴部の寸法公差が下記とした場合、

  +0.3
100 +0.1

軸部の公差が下表のように

  0
100 -0.1

となっていれば、互いにはまりあう、あるいは接する基準寸法が100ということがすぐにわかり、かつ最小の隙間と最大の隙間もわかりやすくなります。この例でいえば、すきま量の最小は0.1となり、最大は0.4となります。

ここでもし両者を±表示だけで公差指定した場合、穴径が100.2±0.1となり、軸径が99.95±0.05となります。基準寸法の100.2と99.95がまず違うので、ぱっと見てもはめあいの関係かわかりにくく、クリアランスとなるすきま量もすぐに計算できなくなります。こうしたケースでは、意図的に±表示を使わず、基準寸法をあわせて公差表示をする場合があります。

寸法数値に対して一律に公差を適用させる

図面の寸法数値すべてに対して個別に公差値を指定していくと、図面を作成するほうも非常に手間がかかるうえ、図面を見て製造するほうも非常に見づらく、作業のやりづらい図面になってしまいます。

そこで、個別に公差の値が指定されていない寸法に対して、一律に公差を適用させることもできます。この場合は、自社で独自に作った普通公差表を図面に記載しておくか、JIS規格の普通公差表を適用するという指定ができます。

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