ハイブリッドの種類

2023年6月4日更新

ハイブリッドとはもともと2種類以上のものを混合したものの意味で、エンジンとモーターという2つの動力源を兼ね備えたハイブリッド車(HVまたはHEVの略称)には大きく3つの方式があります。同じようにモーターとエンジンを積んでいても、これら3つの方式はそれぞれかなり異なる機構を持っており燃費も違います。ハイブリッド方式の車は、電気の力で動くモーターとガソリンの力で動くエンジンをどのように使い分ける仕組みを持つかという点に違いがあります。

ハイブリッド車とは

モーターは低速での使用に効率がよく、エンジンは高速での使用に効率が良いため、ハイブリッド車は、これらの「いいとこどり」をどのようにするか工夫されたシステムを搭載した車といえます。

また、モーターは減速時や下り坂などではアクセルを踏んでいなくともタイヤの回転する力から電気エネルギーへ変換する発電機としての機能も備えており、回生ブレーキと呼ばれる仕組みを持ちます。これにより、モーター使用時に減ったバッテリーへ電気を蓄え、またモーターを動力源として使用することができます。

ハイブリッド車は燃費がよく、電気の消費量もモーターのみの電気自動車より少ないため、航続距離が長くなります(近年その差は縮まりつつありますが)。ガソリン主体の従来の車社会の仕組みにも馴染みやすい特徴を持ち、シェアを拡大してきた動力の方式です。

一方、エンジン、モーター、発電機、トランスアクスルといった複雑な機構を持ち、部品点数も増えるため、整備が難しくガソリン車に比べるとだいぶ廉価になってきているとはいえ、価格も高めにはなります。

HVとHEVの違い

ハイブリッドの略称として使われる「HV」と「HEV」はいずれもハイブリッドカーそのものや自動車の動力の分類がハイブリッド、つまり電気で動くモーターとガソリンで動くエンジンの2種類の動力を備えていることを意味しています(方式問わず)。HVは、Hybrid Vehicleの頭文字を取った略称で、HEVはHybrid Electric Vehicleの頭文字を略したもので、両者の意味に違いはありません。

HEVは主にトヨタ自動車で使われるハイブリッドの略称ですが、他のカーメーカーやハイブリッドを一般名詞として使う場合はHVが使われますが、特に使い分けに厳密な定義があるわけではなく、使用者の所属組織や慣習に依存します。

トヨタでは広い意味での電動車をxEVと定義し、ハイブリッド車のHEVだけでなく、BEV(Battery Electric Vehicle、電気自動車)、PHEV(Plug in Hybrid Electric Vehicle、プラグインハイブリッド自動車)、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle、燃料電池自動車。水素を燃料とする)といった具合に、多様な電動車を「xEV」の略称で分類・構造化しています。いずれも電気モータを搭載していることから、EのElectricを強調するのであれば、この表現に統一性があります。

生産台数や販売台数では現在は拮抗しているガソリンのみのICEからハイブリッドへシフトしつつありますが、トヨタ自動車をはじめ、日本の自動車メーカーは諸外国に比べこの方式が得意です。

また100%電気自動車になってしまうと倒産してしまう自動車部品メーカーが多々出てくることや、長い開発の歴史と高度なエンジン技術に裏打ちされた競争力にも影響が出る懸念から、電気への一本化には反対する既存自動車メーカーが多いのも実情です。

ハイブリッドの3つの方式の特徴

冒頭で述べた通り、一口にハイブリッドと言っても大きく以下の3方式に分かれており、その機構・システムには違いがあります。

シリーズ・パラレル方式

スプリット方式とも呼ばれます。発進・走行時に、エンジンとモーターをうまく使い分ける方式です。例えば、ガソリンを多く消費する発進する際や低速時にはモーターだけを動力源とし、スピードが出てくるとエンジンとモーターを効率よく分担・使い分けながら動力源としていきます。

発進や加速時に燃料を多く使う局面で、モーターに仕事を分担してもらい、電池にたまった電気が少なくなってくるとエンジンを主力としてモーターとともに車を動かします。このとき電池の充電も走行しながら行います。3方式では燃費効率の最も高いハイブリッド方式です。ただし機構も複雑で車自体は重くなります。

エンジンは動力機構として使うだけでなく、発電機も動かすので、ガソリンがあるうちには車から外部に電気を供給するというようなこともできます。

量産でもハイブリッドの先駆けともいえ、今なお、トップクラスの燃費性能を誇るトヨタのプリウス等、トヨタ車の多くはこの方式です。普及のため、トヨタの特許開放に伴い、国内外のメーカーでもこの方式を取り入れたハイブリッドカーは上市されています。

電気モーターのみでも走れる車をストロングハイブリッドと呼ぶこともありますが、この方式は制限はあるものの、この分類に当てはまります。

パラレル方式

エンジンメインとした動力源で、ガソリンを多く消費する局面だけモーターの助けを得て動くタイプの方式です。特にガソリンエンジンの場合、発進時に多くの燃料を使うため、この部分だけでもモーターに委ねることができると、燃費性能の改善になります。

おおむね10%前後は燃費がよくなるとされ、車両価格もシリーズ・パラレル方式ほどにはならない点も利点として挙げられるかもしれません。

エンジンのアシストのみの為、モーターだけでも走行はできません。ストロングハイブリッドとの違いを強調して、マイルドハイブリッドと呼称されることもあります。

従来のガソリン車にバッテリーやモーターを追加するだけなので、小型車にも適用がしやすく重量もそこまで上がらない特徴があります。低コスト、省スペースにできることにもメリットがあります。

スズキスイフトやスバル XVのe-BOXERもこの方式で、世界的には主流の方式といえますが、発電と駆動が同時にできないため、3つのハイブリッド方式の中では燃費性能は劣る傾向にあります。

シリーズ方式

エンジンを車を動かす動力源としては使わず、純粋に発電機として使い、エンジンで発電された電気をバッテリーにためてモーターで車を動かす機構を持つハイブリッド車です。動力機構自体は電気自動車そのものなのですが、発電用とはいえ、エンジン(内燃機関)を搭載しているため、2つの動力を持つハイブリッドカーに分類されます。日産ノートのe-POWERが量産車でこの方式を取り入れ、同社のe-POWERシリーズは大きなインパクトを与えました。ハイブリッドの方式としては一番新しいタイプのものです。

近距離や低速での移動を繰り返す場合、高い燃費性能が期待できる反面、高速走行では燃費が他方式に比べて劣る傾向があります。

ただ電気自動車は、1回の充電で走ることができる航続距離の短さの問題がついてまわりますが、シリーズ方式はガソリンを燃料とした発電機を備えているため、駆動方式が電気自動車であってもこのデメリットがありません。

ハイブリッド車のバッテリー寿命

エンジンとモーターの双方を使い分ける機構である以上、モーターを動かすための電気をためるバッテリーが重要な意味を持ってきます。このバッテリーが寿命を迎えてしまうとハイブリッドの性能を発揮しなくなってしまいます。

ハイブリッドカーはバッテリーを2種搭載しており、走行条件や車両の種類、メーカー、ハイブリッド方式等によりその寿命の正確な算定は困難ですが、一般的には保証期限から推定すると、下表とされています。

ハイブリッド車のバッテリー寿命の目安
バッテリー 寿命、保証期間 走行距離の目安
駆動用バッテリー 5年〜8年前後 10万km走行前後
補機バッテリー 3年〜5年前後 6万km走行前後

日本はハイブリッドのシェアが高い

電気自動車(EV)、ハイブリッド車、燃料電池車(FCV)等のいわゆるガソリン車以外のシェアで見ると、日本国内ではハイブリッドのシェアが90%を超えます。電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)はそれぞれ2〜3%前後となります。

一方で、諸外国で見ると東南アジアが約6割近くハイブリッドとなりますが、日本の9割を超える状況とは状況は全く異なります。北米もハイブリッドは5割に届かない程度で、欧州は2割強、中国も15%前後です。世界全体で見ても、3割強で、電気自動車の4割近いシェアについで多いですが、日本ほどの比率はありません。

こうした意味で、日本はハイブリッド大国ともいえますが、販売台数で見るとガソリン車(ICE)よりも若干少なく、依然、ガソリン車のシェアが高いといえます。おおざっぱに言えば、ガソリンとハイブリッドで市場を分け合っているという状況です。

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