インドのGST導入の影響と輸入時にかかる税金の種類|インド輸入時のIGSTとは何か

2017年11月1日更新

インドで導入されたGSTの概要

インドの税制は複雑なところがあり、従来から物品やサービスにさまざまな税が課せられていました。中でも付加価値税や娯楽税、入州税、サービス税など間接税に相当する税が複数種類あり、煩雑な手続きになっていたことから、これらの税金を統合した物品サービス税の検討が行われていました。この新しい物品サービス税をGST(Goods and Services Tax)と呼び、2017年7月からインドで導入されています。

インドでGSTが導入されたことによるメリットは、後述するように州政府と中央政府の双方から多種多様な税金を課せられていたわけですが、これらがGSTという一つのプラットフォームにまとまったため、実際に支払うことになる税金がわかりやすくはなっています。また手続きがシンプルとなり、税務上は州をまたぐ取引がやり辛かった点等も解消されることが期待されています。ただ、デメリットといいますか、結局のところ物品やサービスの種類によって減税になるものもある反面、増税になっている分野もあります。

たとえば、インドにおける自動車のGSTは、基本のGST税率が28%となっていますが、車種に応じてさらに目的税を課すため、ハイブリッド車であれば43%にもなります。普及を目指す電気自動車は12%となっていますが、それ以外は増税といえます。以下が車種ごとの自動車のGSTとなります。これらはGST委員会で審議され決められるため、状況によっては変わっていきます。企業間であればGSTのコストは売り買いで転嫁できるので、消費税のような扱いにすることができますが、消費者の視点から見た場合、単純に自動車を購入するコストが下表の分だけ上がるということです。

インドにおける新しいGSTでの自動車の税率
車種 GST税率 目的税率 合計税率
小型車(ガソリン車) 28% 1% 29%
小型車(ディーゼル車) 28% 3% 31%
中型車 28% 17% 45%
高級車 28% 20% 48%
SUV 28% 22% 50%
ハイブリッド車 28% 15% 43%
電気自動車(EV) 12% 0% 12%

参考までに上表の車種・車格の定義は以下となります。

  • 小型車:全長4m以下、ガソリン車で1.2リットル、ディーゼル車で1.5リットルを超えない
  • 中型車:全長4mを超える、ガソリン・ディーゼル双方で1.5リットルを超えない
  • 高級車:全長4mを超える、ガソリン・ディーゼル双方で1.5リットルを超える
  • SUV:全長4mを超える、地上高170mmを超える、ガソリン・ディーゼル双方で1.5リットルを超える

GSTは物品の取引がどこで実施されるかで、さらに3種類に分かれ、州内取引にはCGSTとSGSTが課せられ、州をまたぐ取引や輸入貿易時にはIGSTが課せられるという仕組みです。以下に詳細を見ていきます。

インドにおけるCGST、SGST、IGSTの違い

どことどこの取引なのかによって課税されるGSTが変わります。具体的には、同一州内の取引であれば、CGSTとSGSTの双方が課せられることになります。また、州を超える当事者間の取引や貿易による輸入の際にはIGSTが税金として課せられることになります。この州が線引きの基準になっているのは、管轄している組織が異なるわけですが、これはインドが連邦制をとっていることと関係しています。以下、表にまとめると次のようになります。

3種類のGST:CGST、SGST、IGSTの違い
GSTの種類 内容
Central Goods and Services Tax (CGST) 中央政府が課税。同一州内の取引が対象。
State Goods and Services Tax (SGST) 州政府が課税。同一州内の取引が対象。
Integrated Goods and Services Tax (IGST) 州をまたぐ取引や輸入取引といった貿易品に課税。インドからの輸出取引では0%。

GSTに統合される税金の種類

先にインドでのGST導入メリットに、税の煩雑さの解消と述べましたが、具体的には、州政府、中央政府が徴収する税金のうち、以下のような税が、GSTに統合されます。

GSTの対象となる税金
州政府が課税する税金 中央政府が課税する税金
VAT/Sales tax(州付加価値税)
Entry tax(入境税)
Entertainment tax(娯楽税)
Luxury tax (贅沢税)
Tax on lottery, betting, gambling(宝くじ、ギャンブル等の税金)
Octroi(入市税)
Purchase tax(購入税)
Central sales tax (CST、中央売上税)
Central excise duty(中央物品税)
Additional excise duty(追加物品税)
Additional customs duty(CVD、相殺関税)
Special additional duty of customs(SAD、特別追加関税)
Service tax(サービス税)
Excise duty levied under medicinal and toiletries preparations

インドにて輸入する際にかかる税金とIGST

このGST税制はインドへ物品を輸入する際も同様にかかりますが、基本関税と教育目的税、SVBといった費用は従来どおり、GSTとは関係なく徴収されます。インド輸入申告時のBill of entryを取り寄せてみるとわかりますが、今までは相殺関税や特別追加関税といった名目で徴収されていた税金がすべて0になっている代わりに、IGSTという名目で新たに税金が課せられています。

GST導入後の輸入関税と輸入諸税
従来 GST導入後(2017年7月から)
基本関税(BCD)
教育目的税(Education Cess, EC)
相殺関税 (CVD)
特別追加関税 (SAD)
基本関税(BCD)
教育目的税(Education Cess, EC)
IGST(物品の種類に応じた税率。下記参照)

インド輸入時の輸送コストにかかるGST

上記は、物品の売買コストにかかってくる税金でしたが、輸送費や輸入時の港湾や空港での諸費用についても取引条件(インコタームズによるトレードターム)によってはGSTがかかってきます。輸送賃に対するGSTを見ると、海上の5%に対して、航空は18%と輸送モードによって税率が違うことがわかります。

輸入時の輸送コストにかかるGST
輸送モード 取引条件 GST税率
航空輸送費、海上輸送費 輸出地での諸経費 集荷費用 着地諸経費
航空 EXW 0% 0% 0% 18%
FOB 0% - - 18%
CIF - - - 18%
DDU/DDP - - - 18%
海上 EXW 5% 18% 18% 18%
FOB 5% - - 18%
CIF -(輸入者側が5%納税) - - 18%
DDU/DDP - - - 18%

インド輸出時の輸送コストにかかるGST

インド発で輸出する場合も同様に、インコタームズにおけるトレードターム次第では下表のようにGSTが掛かることになります。

輸出時の輸送コストにかかるGST
輸送モード 取引条件 GST税率
航空輸送費、海上輸送費 輸出地での諸経費 集荷費用 着地諸経費
航空 EXW 0% 0% 0% -
FOB 0% 18% 18% -
CIF 18% 18% 18% -
DDU/DDP 18% 18% 18% 18%
海上 EXW 0% 0% 0% -
FOB 0% 18% 18% -
CIF 5% 18% 18% -
DDU/DDP 5% 18% 18% 18%

インドにおけるGSTの税率

これまで述べてきたとおり、インドのGSTというのは物品ごとに税率が定まっており、大きくは5%、12%、18%、28%の4カテゴリーに分かれるといわれる事もありますが、厳密には、下記のとおり7段階の税率のカテゴリーに分かれています。贅沢品と目されるものには、28%にさらに目的税を課す自動車のような品目もありますので、トータルの税率はそれらも加算して見ていく必要があります。

また、似たような物品でも細かい区分けによって複数のカテゴリーにまたがっているものもあります。

GST税率は、GST委員会で決められているものですが、具体的には関税を決める際と同じように、HSコードによる分類ごとに税率を設定しています。このため、まずは調べたい物品のHSコードを調べ、それからGST税率の一覧表を見ていく必要があります。おおむね上4桁の項(heading)によってくくられていますが、中には6桁以降の番号まで指定されているものもあります。

追加・修正情報含め、インド財務省の公式サイトに掲載されていますので、こまめに調べる必要があります。オンラインでも検索できますので活用してみてください。

インドのGST税率の大まかな区分
GST税率の区分 主な対象品の例
0%(免税) 家畜、肉、野菜、穀類などの未加工の食品、いわゆる生活必需品。毛や絹などの繊維。宇宙船や人工衛星。新聞や書籍。封筒や葉書。
0.25% 未加工の天然ダイヤモンド、人工ダイヤモンド。貴石。
3% ダイヤモンドや真珠、貴石。貴金属。コイン。
5% 魚。加工乳、油、ヨーグルト、保存用に加工された野菜、天然の砂、水晶などの鉱石、医薬品、天然ゴム、布類
12% 生きた馬、肉類、バター、チーズ、加工食品、医薬品類、携帯電話、歯磨き粉、ボールペン、めがね、皮革類、万年筆、シリコンウェハー、おもちゃ類、自転車
18%(GSTの基本税率) コンデンスミルク、砂糖、竹製品、パスタ、レンズなどの光学製品、ミネラルウォーター、化学品、写真のフィルム類、プラスチック類、金属類、製造などに用いる資本財や中間財、貨物運送などの取扱費用、旅行、スポーツイベントなどのサービスに対する費用
28% チョコレート、チューイングガム、絵画用品、自動車部品、家電、消火器、造花、人工毛皮、化粧品、かみそり、コンクリート製品、石材製品、セラミック製品、ガラス製品、トイレタリー衛生用品、食器洗い機、ポンプ、事務機器、バイク、個人用の飛行機、ヨット、双眼鏡類、カメラ、検査機器など
28%+目的税 自動車、ぜいたく品、嗜好品全般

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