金属のヤング率の一覧|金属材料の剛性の比較する一覧表

2015年9月14日更新

ヤング率は縦弾性係数(たてだんすうけいすう)ともいい、剛性を見る為のパラメータで、数字が大きいほど変形のしにくい材料ということになります。変形がしにくいとは、例えば、薄い板を曲げる力を加えた時、その板の「たわみ」の大きさが小さいというということと同じ意味です。つまり、ヤング率の大きい材料というのは、剛性が高い材料(変形しにくい、変形量が小さい)ということになります。

但し変形がしにくいことと、材料の持つ「強度」は別の問題になりますので混同しないよう注意が必要です。強度とは、変形のしにくさではなく、どれくらいの力が加わっても元に戻るか(降伏点)、破壊されないか(引張強さ)という観点から見られることになります。「強度」が耐えられる力の大きさを見るのに対し、「剛性」は変形量を見る為のパラメータです。

ヤング率(縦弾性係数)は、材料にある力が加わったときに、どれくらい変形するか、その「変形量」を計算する際にも使います。

何らかの負荷がかかったときの変形量を考慮する機会は多いと思います。精密加工、研削、研磨、切削などでは、工作機械側、工具側の双方にこの変形のしにくさである「剛性」が大きくないと精度のよい加工ができません。加工対象を保持する機械や、工具の方が変形してしまえば、加工対象を精度よく加工し続けることができなくなります。このため、大きな負荷がかかるものの、なかなか変形しない「剛性」がこうした機械・設備では重要視されます。ただし、剛性が高いということは、大きな力がかかったときに、物体が変形することによる力の吸収がなく、いわばバッファーともなる緩衝地帯がないこととも同義であるため、力の加わる双方での強度も求められることになります。

なお、変形のしにくい材料、つまり剛性の大きい材料としては、例えばダイヤモンドがその筆頭としてあげられます。鉄鋼材料については、強度の違いは鋼の種類や熱処理で大きく変わりますが、剛性についてはほとんどかわりません(だいたい同じ剛性)。鉄鋼はとくに「成分」と「熱処理」でその機械的強度が大きく変わることで知られますが、剛性については大きくは変わらない材料です。つまり、高価な合金鋼でも、安価な軟鋼でも剛性は似た値となります(一方で、「強度」は成分や熱処理で大きく変わってきます)。ただし、一般に、剛性は材料の種類が変われば大きく変わってきます。例えば、金属でも鉄鋼とアルミ、銅ではかなり異なってきます。

主な金属のヤング率の一覧
金属の種類 材料記号・熱処理 主な組成 ヤング率(E/GPa) ずれ弾性率(G/GPa)
純鉄(99.96%)焼鈍し - 99.96 Fe 205 81
一般構造用圧延鋼材 SS400(焼鈍し) Fe -0.1C 206 79
機械構造用炭素鋼 S45C(焼入れ焼き戻し) Fe-0.45C-0.25 Si-0.8 Mn 205 82
高張力鋼 HT80(焼入れ焼き戻し) Fe-0.12C-0.8Mn-1.0Ni-0.5Cr-0.4Mo 203 73
クロムモリブデン鋼 SCM440(焼入れ焼き戻し) Fe-0.4C-0.7Mn-1.0Cr-0.25Mo NA NA
ニッケルクロムモリブデン鋼 SNCM439(焼入れ焼き戻し) Fe-0.40C-0.30Si-0.70Mn-1.85Ni-0.80Cr-0.25Mo 204 NA
合金工具鋼 SKD6(焼入れ焼き戻し) Fe-0.37C-1.0Si-5.0Cr-1.25Mo-0.4V 206 82
ばね鋼 SUP7(焼入れ焼き戻し) Fe-0.6C-2.0Si-0.85Mn NA NA
低温圧力容器用ニッケル鋼鋼板 SL9N590(焼入れ焼き戻し) Fe-0.05C-0.3Si-0.9Mn-9.0Ni 193 74
マルエージング鋼 350級(焼鈍し、時効処理) Fe-17.5Ni-12.5Co-3.75Mo-1.8Ti-0.15Al 186 71
析出硬化系ステンレス鋼 SUS631(焼き戻し、時効処理) Fe-0.06C-0.4Si-0.6Mn-7.0Ni-17.0Cr-1.2Al 204 NA
マルテンサイト系ステンレス鋼 SUS410(焼入れ焼き戻し) Fe-0.15>C-1.0>Si-1.0>Mn-12.5Cr 200 NA
フェライト系ステンレス鋼 SUS430(焼き鈍し)) Fe-0.12>C-0.75>Si-1.0>Mn-17Cr 200 NA
オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304(固溶化処理) Fe-0.08>C-1.0>Si-2.0>Mn-9 Ni-19 Cr 197 74
インコロイ800 NCF800(焼き鈍し) Fe-32.5 Ni-21 Cr-0.4 Al-0.4 Ti 196 73
ねずみ鋳鉄 FC材(鋳造したまま) Fe-3.3 C-2 Si-0.5 Mn 100 40
球状黒鉛鋳鉄 FCD370(鋳造したまま) Fe-2.5 C- 2 Si 176 69
オーステンパ球状黒鉛鋳鉄 FCD900A(オーステンパ処理) Fe-3.5 C-3 Si-0.2 Mn NA NA
黒心可鍛鋳鉄 FCMB360(焼きならし) Fe-2.5 C-1 Si-0.4 Mn 172 68
ニッケル Ni(焼き鈍し) Ni 99.99 204 81
インコネル600 NCF600(焼き鈍し) 72 Ni-15.5 Cr-8 Fe 214 76
ハステロイX (焼き鈍し) Ni-22 Cr-9 Mo-0.6 W- 18.5 Fe-1.5 Co-0.6 W 197 75
モネルメタル (焼き鈍し) Ni-30 Cu-4 Si-2 Fe-1.0 Mn 179 66
ニクロム GNC108(製造したまま) 80 Ni - 20 Cr 214 -
無酸素銅 C1020(完全焼き鈍し) Cu > 99.96 117 -
7-3黄銅 C2600(完全焼き鈍し) 70 Cu-30 Zn 110 41
6-4黄銅 C2801(完全焼き鈍し) 60 Cu-40 Zn 103 38
ネーバル黄銅 C4640 P(製造したまま) Cu-40 Zn-0.8 Sn 103 -
りん青銅 C5212 P(完全硬化) Cu-8 Sn-0.2 P 110 43
洋白 C7521 P(完全硬化) 65 Cu-18 Ni-Zn 120 47
ベリリウム銅 C1720(完全硬化) Cu-1.9 Be-0.2 Ni 130 -
黄銅鋳物 YBsC2 68 Cu-2 Pb- Zn(残り) 78 NA
青銅鋳物 BC2C Cu-8 Sn-4 Zn 96 NA
りん青銅鋳物 PBC2C Cu-11 Sn-0.3 P NA NA
マンガニン CMW 84 Cu-12 Mn-4 Ni 123 46
純アルミニウム A1085 P(焼鈍し) Al>99.85 69 27
アルミニウム合金(耐食アルミ) A5083 P(焼鈍し) Al-4.5 Mg-0.5 Mn 72 NA
ジュラルミン(アルミ合金) A2017 P(T4, 常温時効) Al-4 Cu-0.6 Mg-0.5 Si-0.6 Mn 69 NA
超ジュラルミン(アルミ合金) A2024 P(T4, 常温時効) Al-4.5 Cu-1.5 Mg-0.6 Mn 74 29
超々ジュラルミン(アルミ合金) A7075 P(T6, 焼入れ焼き戻し) Al-5.6 Zn-2.5 Mg-1.6 Cu 72 28
シルミン AC3A(鋳造したまま) Al-12 SI 71 NA
マグネシウム合金 MP5(製造したまま、板材) Mg-3.5 Zn-0.6 Zr 40 17
マグネシウム合金 MB1(製造したまま、棒材) Mg-3 Al-1 Zn 40 17
マグネシウム合金鋳物 MC1(T4, 常温時効) Mg-6 Al-3 Zn-0.3 Mn 45 16
純チタン C.P.Ti(焼鈍し) H<0.013-O<0.20-N<0.05-Fe<0.20 106 45
チタン合金 60種、6Al-4V Ti-6 Al-4 V(焼鈍し) 106 41
亜鉛ダイカスト合金 ZDC1 Zn-4.0 Al-1.0 Cu-0.04 Mg 89 -
上記以外の金属、金属以外のヤング率の一覧
材料の種類 ヤング率(E/GPa) ずれ弾性率(G/GPa)
ダイヤモンド 1000 NA
インバール 144 57.2
カドミウム 49.9 19.2
クラウンガラス 71.3 29.2
フリントガラス 80.1 31.5
78 27
82.7 30.3
弾性ゴム (1.5-5.0)x10^-3 (5-15)x10^-4
コンスタンタン 162.4 61.2
石英(溶融石英) 73.1 31.2
超硬(WC、炭化タングステン)、タングステンカーバイド 534.4 219
チタン 115.7 43.8
ナイロン(PA66) 1.2から2.9 NA
16.1 5.59
白金(プラチナ) 168 61
パラジウム(鋳物) 113 51.1
ビスマス 31.9 12
ポリエチレン 0.4から1.3 0.26
ポリスチレン 2.7から4.2 1.4
木材(チーク材) 13 NA

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