高炉が止めらないといわれるのはなぜ?

2022年8月27日更新

高炉は現在日本では3社のみが保有する鉄鉱石から鉄鋼材を作り出す設備です。鉄溶鉱炉ともいい、高さは100メートル、炉の容積は約2000m3から約5000m3にもなります。年々合理化が進み数が減ってはいます。

炉には鉄鉱石とコークスを交互に入れて溶かして鉄を取り出していますが、一度高炉の火を落としてしまうと、炉内に残ってしまっている鉄の中間生成物が冷えて固まっているため、こうした残渣をすべてかきだす作業が必要になります。

火が入っていれば、これらはどろどろの液状をしており、常時流れていますが、このような状態にするためにはまず残ったカスを取り除く作業が必要です。これらは容易にとれず、各種方法を駆使して砕きながら取り除きますが、設備も巨大ですので、これにはかなりの工数とコストがかかります。

状況によっては高炉内に残ってしまっている冷えて固まった鉄の中間生成物を取り出すために高炉を解体する必要が出てくることもあります。

再度生産が必要になったといわれても、すぐには生産再開できず、相当なリードタイムがかかります。スイッチのオン、オフで制御する一般的な設備・機械とは異なる所以です。

こうした事情から通常は売上の増減にあわせて停止する類の生産設備ではなく、一度火を入れたら、最低でも十数年は365日片時も休みなく稼働させることを前提に作られる設備と工程ということになります。この辺りは他の製造業の設備とは一線を画すものとなります。

2009年のリーマンショックの際に高炉の火を落とすということで、その関連産業も含めた影響が話題になったことがありますが、高炉を止める=鉄鋼業で成り立っていた町の産業が止まるということも意味します。

また鉄鋼材を使用するユーザーの中には、高炉の場所を指定して購入している場合があります。品質維持に際しては微妙な変化が製品に影響を及ぼすことがあるため、どこかの高炉が休止してしまい、別の高炉からの鋼材にかわるという場合、それを使って製品を作り一から評価・検証を行う場合もあります。

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