スプーンの材質|赤ちゃんの離乳食用の観点から

2021年5月2日更新

赤ちゃんが離乳食用に使うスプーンは言ってみれば安全な材質や形状が第一であるため、素材として何を使っているのかが大きなポイントになります。もっとも実際には食べさせるために使うものであるため、子供によっては相性や好き嫌いもあります。ここでは使われている材料の観点から特徴、材質ごとの違い、メリット、デメリットについてみていきます。

材質としては大きく分けると、金属、プラスチック(樹脂)、木(天然)といった括りになります。使う上での材料の違いは、舌触りの違いや、熱伝導率の違いから食べ物の温度をどこまで伝えるかという違い、衛生面での手入れのしやすさの違いが出てきます。

また、いずれも昨今は素材や材料そのものから溶出、つまり溶け出す物質が何かというのも検討材料となります。プラスチックにはBPA、BPA関連化合物の問題があり、シリコンにもシロキサンの問題、金属にもアレルギーや元素がどこまで溶け出すかという問題が懸念点として挙げられることがあります。金属は必須元素がある一方、特定の金属成分を摂取しすぎると健康被害をもたらします。塗料や塗装についても同様の視点で見れば、木製・竹製についてもコーティングに何が使われているかという点を見る必要があります。

乳幼児は体が小さいうえ、先も長く、体内に取り込まれ蓄積される物質の影響をより受けやすいという指摘もあります。素材や加工の良しあしがダイレクトに反映される製品であるため、安全性を見極めて選びたいところです。以下に金属材料だけでなく、工業材料としても使われている各素材ごとのスプーンの特徴を列挙していきます

材質ごとのスプーンの特徴

ステンレス

  • 金属自体が他の材料に比べると温度を伝えやすいので熱湯消毒した直後には熱く注意が必要。食べ物の温度も伝えやすいが、ひんやりする。
  • ステンレスの種類は豊富だがカトラリーに使われるものは18-8ステンレス(SUS304)が主流。
  • 出所のはっきりしたステンレス規格材を用いており研磨などの表面加工も行われているものであれば、毎回熱湯消毒でき、衛生的。
  • 熱湯で煮沸し続けても、素材そのものから溶け出す成分は少なく食品衛生上問題ないとの研究論文(「ステンレス製器具及び食器からの金属の溶出」河村葉子、辻郁子、杉田たき子、山田隆 食衛誌 Vol.38, No.3 1997)もあり、カトラリーとしては最も一般的な材質。

  • 銀のスプーンは富や財産の象徴でもあり、古くから食べ物に困らないようにとの願いを込めて縁起物の贈り物としても人気。幸福のお守りとしての意味もある。
  • 実用上は、殺菌効果が高い金属。
  • めっきされているものについては、そのめっき金属の性能や安全性を引き継ぐため、単に「銀製」というだけでなく、表面にどのような処理がされているか確認が必要。
  • 安価なものは銀メッキされており、中身は別の金属が使われていることがある。
  • 純度が高いものほどやわらかくなり傷がつきやすい
  • 金属のなかで随一の熱伝導率の高さを誇るため、熱が伝わりやすい。熱の伝わりやすいという点は、食器やカトラリーとしては一長一短ある。ステンレスに比べるとおおよそ28倍もの熱伝導率がある。 熱伝導率が高いと、冷たいものは冷たいまま、温かいものは温かいまま食べることができる。
  • 黒ずみ、黒錆と呼ばれる「黒ずむ」現象に弱い。オゾンでの酸化と硫黄が含まれる物質に接すると硫化して黒くなってしまう。
  • 毎日使って毎日洗っていると変色しにくいが、しばらく置いておくと黒ずんでしまう
  • 黒ずんでも落とせるがメンテナンスには他の卑金属に比べて手間がかかる
  • 金属アレルギーが出にくい金属とされる

洋白

  • 洋銀あるいはニッケルシルバーとも呼ばれるが、銀ではなく銅合金に分類される洋白。銅とニッケル、亜鉛を主成分とした合金。実用上は、銀食器の代替物として作られたが、スプーン、ナイフ、フォークとして使われる場合、高級カトラリーの一角を占める。
  • 銀の不足に伴い、古くからカトラリーの素材として使われている。見た目は銀と区別することは難しい。銀めっきされている場合は、区別できない。
  • 表面に銀メッキされているものが多いため、手入れは銀食器に準じた扱いとなり、高級なものは銀とほぼ同じ使用感となる。
  • 耐食性に優れる合金であるため、錆や変色には強い(ただし銀メッキしている場合は、銀と同様に黒ずむことがある)

  • 銀に次いで殺菌効果が高い金属。日本では食品衛生法によって食器にはそのまま使うことができず、食品が接することになる表面にはスズ等のメッキを行うことが必要。
  • 長時間、酸性の食品と接しているとその部分から大量の銅イオンが溶け出す恐れがあるとの理由。
  • 銅製のスプーンは稀でほとんど見ないが、レンゲや湯豆腐すくい用の網杓子に銅製のものがある(銅線はやわらかく手編みにできる)
  • スプーン、ナイフ、フォークといったカトラリー製品では、銅の合金である洋白(洋銀)が多用される。

アルミ

  • 熱伝導率は銀の半分ほどだが、鉄鋼材料やステンレスに比べると10倍近くある。
  • このため、体温が伝わるので、ステンレス製のものに比べると硬いアイスクリームもスムーズに溶けるという触れ込みの製品もある。
  • アルミはアルツハイマーの原因になるのではとの説は現在は否定されている。
  • 軽い金属なのでカトラリーとしては重量感に欠けるきらいがあり、あまり一般的には使われていない

ホーロー

  • ホーローは金属の表面にガラスをコーティングしたもの。鍋などの調理器具ではよく使われる。カトラリーとしてはステンレス材質のものをホーロー仕上げしたものが主流。
  • 金気などが比較的少ない金属に対しても敏感な場合、ガラスでのコーティングになるため、陶器のような使用感が楽しめる 衝撃には弱く、落とすと割れてしまう。ガラス食器に準じた扱いが必要。
  • 釉薬がうまくまわりこまなかった部分は、ガラス質でコーティングできずに金属が露出してしまうので、もとの金属の性能がそのまま出てくる。錆びる金属であれば、そこから錆びてしまう。
  • 熱には強いが急激な温度変化にあまり強くなく、陶磁器のように扱う必要がある。金属の場合は熱の温度変化でカトラリー自体が破損してしまうことはないが、そのリスクがある。
  • ガラス質でのコーティングであるため、耐酸性が強い。
  • 電子レンジには使えない
  • 食洗器は破損の恐れがあるため使用できないものが多い。
  • 金属色ではない別種の美しい色味と仕上げが可能。

プラスチック

  • 軽くて安価
  • 傷がつきやすい
  • 歯が生え始めて噛みだすとプラスチックの表面を削ってしまうことがある
  • 色やにおいが素材につきやすい。特に色がつきやすい。
  • BPAフリーとうたわれているが、熱湯消毒を頻繁に行うことを考えると、BPAやその類似物質であるBPA関連化合物(BPB、BPE、BPF、BPP、MBP、TDP、MBBOなど)が溶け出すことが心配
  • 熱に弱く、シリコンほどの耐熱性はない
  • プラスチックの種類によっては、耐熱性が足りず、熱湯での消毒ができない。軟化したり、ゆがんだりしてしまう。
  • 油は落ちにくい
  • 食器や乳児が使う製品には抗菌剤(抗菌作用を持たせる薬剤)をプラスチックにいれない業界団体のルールがあるが、抗菌加工されていないか注意が必要。乳幼児への抗菌剤そのものの影響がよくわかっていない。抗菌剤が入っていないと材質によっては丁寧に乾燥させておかないとカビが発生することがある。

シリコン

  • 耐熱温度高く、熱湯消毒にも強い
  • さじが曲がるので皿の食べ物を残すことなくきれいにとれる
  • 口当たりもやわらかく傷つける心配がない。ただしゴムのような独特な舌触りがある。
  • 色やにおいが素材につきやすい
  • 油は落ちにくい
  • 200℃以上に加熱することでシロキサン(環状シロキサン)が出ることが指摘されている。油を使った加熱では200℃を超えてしまうため注意が必要
  • 成形工程によっては残留シロキサンの量が多いことがあり、製品の重量比で0.1%以上含有する場合は、届け出の義務が生じる

  • 天然のぬくもりがあるが、木材製品はニスや塗料等の表面処理を行うため、何を表面に塗っているかがポイント
  • 無塗装、蜜蝋(みつろう)仕上げ、オイル仕上げ、ウレタン塗装、ガラス塗装、漆塗りといった多彩な表面処理がある。木製の場合、この表面処理の種類によって扱い方が異なる。
  • 無塗装品については、洗う時も洗剤を極力使用しないほうがよいといわれる。木の表面には微細な穴があり、これらに洗剤が染み込んでしまうため。
  • 水を吸うため、乾燥時に割れることがある。
  • しっかり乾燥させないとカビることがある。
  • つけ置き洗いには向かない。
  • よく洗浄し乾燥をしっかりしないとカビたり、腐ることがある
  • また表面は目に見えない多孔質であるため、いろいろなものを吸ってしまう。丁寧に洗う必要がある
  • 食器洗い機は使えないものが多い
  • 急激な温度変化で割れることもあるため、100℃以上のものを注いだりのせたりすることは推奨されていない。
  • 素材をいためないようにという観点からは熱湯消毒にはあまり向かない。また熱湯による影響は、木の表面にどのような処理をしているかの影響を受ける。ウレタン塗装であれば、熱に耐えられる温度もウレタンと同等になる。
  • 水分のついた鉄製の容器や器具と接触すると、タンニンと反応して黒ずんでしまうことがある。

  • 木と同様、表面処理に何を使用しているかが取り扱いや安全性の面ではポイントになる。木に比べると割れにくいが、扱いは木製食器とほぼ同様の対応が必要。
  • 竹製の場合、木製と違い糖分を含むため、これが原因で虫がわいてしまうことがある。
  • 白い粉上のものが表面にふくことがあるが、これは中に虫が生息している可能性がある。熱湯につけて消毒が必要。
  • 木製、竹製は熱伝導が低いため、熱くなりにくい

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