アルマイトはアルミの表面加工の技術
アルマイトはアルミ合金の表面に人工的に酸化アルミニウムの薄い膜を作り出す技術で、これの有無でアルミの錆や腐食に対する強さに違いが出てきます。他にもアルミの地肌だけのワークと、アルマイト処理を行ったアルミのワークとでは、硬度や摩耗といった機能性に違いが出てくるほか、意匠性をあげるための色付けに使われることもあります。
- アルマイトはアルミの表面加工の技術|目次
アルミは自然の不動態皮膜で覆われている
アルミニウムはもともとステンレスと同様に不動態化といって、そのままでも金属表面に薄い保護膜が生成され、腐食に強い金属として知られます。つまり錆びにくい金属のひとつです。この薄い保護膜の正体は酸化アルミニウム(Al2O3)であり、非常に強い不動態皮膜として材料をコーティングします。
ただし、湿気・水分の多い場所ではこの酸化アルミニウムのうえに、さらに水和酸化物の皮膜ができて、これらが腐食生成物となり、白錆といわれるものになります。もっとも、白錆ができたからといってアルミの本体が腐食して削られていってしまっているということではなく、本体の酸化アルミニウム膜が機能していれば、それ以上腐食が進んで材料にダメージを与えることもありません。
アルミの表面に酸化アルミニウムの膜があっても、銅イオンや鉄イオン、塩化物イオンが存在する環境では孔食といわれる小さな穴状の腐食が発生することがあり、アルミが水道管に使われない理由の一つとなっています。
また酸性やアルカリ性、そのどちらに対しても腐食するという性質があります。酸化性の酸に対しては、酸化物皮膜生成の補助となるため、耐食性が発揮されますので、どちらかといえばアルカリに弱いということになります。鉄に比べれば錆には強い材料ですが、何も処理せずに腐食を確実に防げるというほどの耐食性はありません。
人工的に酸化アルミニウムを保護膜として作り出す
こうしたアルミの錆に対する耐性を高める技術がアルマイト処理です。色を付けることもできる技術であるため、装飾や意匠目的で加工されることもあります。
まず対象となるアルミを酸性溶液中で電気分解を利用した陽極酸化処理(アノード酸化処理)によって一定の厚みのある酸化アルミニウム皮膜を作ります。この膜は六角柱状が緻密に敷き詰められた構造で、中心部には小さな穴ができるものの、その穴はアルミニウム本体にまでは達しません。またそもそもの厚みが自然にできる不動態皮膜の酸化アルミとは全く違います。
この穴はアルマイト処理の際、沸騰水や加圧水蒸気に触れさせることで閉じさせることができます。これを封孔処理といいますが、穴を閉じる前に、その中に防食作用のある液体や顔料を入れてから封じ込めると膜に様々な機能を付与することができるという仕組みです。穴を閉じてしまうだけでも耐食性は発揮されます。
アルマイトによる膜の厚みは薄いもので5ミクロン程度、硬質のものであれば、30ミクロン程度まで厚くすることもできます。アルミニウムを放っておいてもできる不動態皮膜は約1nm程度の薄さです。1μmは1000nmですので、薄いアルマイトでも、自然にできる酸化アルミニウム皮膜の5000倍、硬質アルマイトなら30000倍もの厚さがあることになります。
膜の厚さは耐食性を向上させるだけでなく、表面の硬さも上げますので、耐摩耗性の向上も期待できます。通常アルミニウムの表面を保護する際にできる酸化アルミの膜をさらに厚くして、人工的につけてやる技術がこのアルマイトになります。
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