金属に適した砥粒の選定

2013年9月10日更新

砥石における研削や研磨では、粘りのあるやわらかい金属よりも硬めの材料のほうが加工がしやすいですが(あまり硬すぎても加工しにくくなりますが)、これには相性のよい砥粒を選定してやる必要があります。

研削、研磨、あるいはブレードなどの切削にしても、焼結体を使った工具を使う場合、「刃」の役割を担って加工対象であるワークを削っていくのは「砥粒」となるため、この選定がまず重要となります。特にここでは研削砥石での加工を前提に、選び方の目安を述べていきます。

まず、研削砥石の砥粒には、「アルミナ」と「炭化ケイ素」の2大系統があります。

アルミナはA砥粒とも言われますが、酸化アルミニウムのことで、Al2O3の組成をもちますが、研削材料として使われる場合、以下のように大別すると4種類あります。

炭化ケイ素は、C砥粒とも言われ、大きくGCとCの2種類のものがあります。

一般砥粒の種類と性能
砥粒 砥粒の種類 ヌープ硬度 破砕性
A 褐色アルミナ質研削材 2020 50 薄茶
WA 白色アルミナ質研削材 2020 57
PA 淡紅色アルミナ質研削材 2050 48 ピンク
HA 解砕型アルミナ質研削材 2100 38 灰白
C 黒色炭化ケイ素質研削材 2700 64
GC 緑色炭化ケイ素質研削材 2700 70

砥粒はダイヤモンドが鉄鋼と相性が悪いように、特定の組み合わせの向き不向きもありますが、基本的には「硬さ」と「破砕性(フライアビリティ)」という指標が使われます。一般にはアルミナ系は鉄鋼系に向き、炭化ケイ素系は非鉄金属や非金属、鋳鉄に向くとされます。

砥粒の破砕性とは、適宜加工中に欠けながら鋭利な面を出しつつ加工しますので、ある程度の破砕性が必要です。この指標が高いものほど切れ味は上がりますが、損耗も激しくなります。硬度が高いものは破砕性も高くなりますが、これらは精密研削や軽研削に向きます。高度が低く破砕性が低いもの(靭性が高いもの)は、ライフが重視される重研削や高能率研削に向きます。

アルミナ砥粒と、炭化ケイ素砥粒は、こと金属材料を加工する点においては、材料の「引張強さ」に応じて研削性、あるいは研削効率がちょうど逆の性能を示すと言われます。すべての金属材料にあてはまるわけではありませんが、一般に、引張強さが大きい金属については、アルミナのほうが研削能率が高くなり、反対に引張強さが小さい材料、例えば亜鉛、すず、鋳物、黄銅鋳物などは炭化ケイ素の研削能率がよいとされます。

なお、下表では特にCBNとダイヤモンドの砥粒には触れていませんが、一定の硬さ以上の材料であれば鉄鋼系はCBN、非鉄系の金属はダイヤモンドを使うこともできます。ただし粘りのある材料にはいずれも適しません。

金属ごとに適した砥粒の一覧表
鋼材 鋼種(材料記号) 適した砥粒
構造用炭素鋼、一般鋼 SS、SC、SCK、SBK、STK、STM、SFB A
低合金中炭素鋼 SCM、SPC、SPHC、SCr、SNCM A、WA
低合金高炭素鋼、窒化鋼 SUJ、SUP、SK、SKS、SKD4、SKD5、SKD6、SKD12 WA
オーステナイト系ステンレス、耐熱鋼 SUS303、SUS304〜316、SUH、YAG PA、GC
フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス SUS405、SUS430、SUS403、SUS416、SUS420、SUS440 PA
クロム合金鋼 SKD11、SKD1、SKD2(硬度HRC58以上) PA
高速度鋼(ハイス鋼) SKH4、SKH9、SKH51、SKH57(硬度HRC60以上) HA、CBN
鋳鍛鋼 FC、FCD、FCMB、FCMW、RCMP C
純金属、インコロイ、インコネル、フェロチック、ハードクロム、耐摩金属、特殊材料 Fe, Incoloy, Nimonic, Fero WA、HA
非鉄金属、チタン、アルミニウム合金、銅合金 Al, A1085〜A8079, Ti, Pb, Mg, Cu C
超硬合金 D10〜D50 GC

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