スチールホイールとアルミホイールの違い

2023年10月24日更新

スチールホイールは鉄鋼製のホイールであるのに対して、アルミホイールはアルミ合金で作られたものであり、これらは材質の違いがもたらす特徴が顕著に出てきます。どちらが優れているかという論争は以前からありますが、それぞれのメリット、デメリットを以下に見ていきます。

スチールホイールとアルミホイールの違い|目次
  1. 見分け方
  2. メリットとデメリット

見分け方

アルミホイールとスチールホイールの見分け方は強めの磁石を用いて、磁石がつくなら鉄鋼、つかなければアルミとして判別する方法もありますが、昨今は意匠性・装飾性・デザインも進んでおり見た目からでは判別が難しいものもあります。

アルミホイールの代表的なデザイン・構造としては次のようなものがあります。

  • スポーク式:5〜10本前後のスポークがホイールの中心からリムにかけて放射状に広がっているタイプ。
  • フィン式:細いスポークが多量に組みあわされたもので高級感がある。
  • メッシュ式:網目上のデザインを持つタイプ。
  • ディッシュ式:ディスク面を広くとったタイプでデザインの幅が広い。強度が上がるが重くなる。

またスチールホイールは、ほとんどのケースでホイールキャップを装着しているので、これがあると弱い磁石だといまいちわかりにくいことがあります。下表に見分け方をまとめていきます。

見分け方の例
アルミホイール スチールホイール
磁石につかない 磁石につく
軽い。ただし肉厚にしてスチールホイールよりも重くしているものもある。 重量がある。
複雑なデザインが多く、スポークやリムの形状が多様で、魅力的な外観。スポーク式、フィン式、メッシュ式、ディッシュ式等がある。 デザインはシンプル。
光沢があり、光り輝く外観。またアルマイト加工により色もバリエーションがあります。アルミニウムの表面は光沢があるため、鏡のような仕上げが一般的。 外観はなめらかで光沢があるというよりはマットな質感。地味な印象だが、ホイールキャップによって意匠性や装飾効果を高めているものもある。

メリットとデメリット

アルミホイールとスチールホイールはそれぞれメリット・デメリットがあり、市場ではアルミが多くなってはいますがどちらかに一本化されていない点から見てもわかる通り、どちらも一長一短あります。下表に両者の違いと特徴を対照表にまとめていきます。

アルミホイールとスチールホイールの違い
比較項目 アルミホイール スチールホイール
素材 アルミニウム合金 鉄鋼
重量 軽い 重い
耐久性 一般的にスチールホイールより劣る 高い
靭性(破壊抵抗性) スチールより劣る 高い
冷却性能 高い(通気孔が効果的な冷却性能を発揮させる) 比較的低い(構造上、通気孔が少ないことで冷却性能が制限されることがある)
燃費 高速走行時に向いており、燃費が向上 燃費がわずかに低下することがある
外観 スタイリッシュで多彩なデザイン シンプルなデザイン。ただしホイールカバーや装飾塗装でデザインの幅は広がっている
カスタマイズ性 サイズ、デザイン、仕上げが豊富 カスタマイズの余地が限られている
価格 比較的高い 比較的安い
サスペンション 操縦性向上に寄与することがある 一般的には操縦性に影響を与えない
ブレーキ性能 冷却性能が高く、ブレーキ性能向上に寄与 一般的な道路向けブレーキ性能は変わらない
耐久性(悪路) 耐久性が劣ることがある 頑丈で耐久性が高い
耐久性(低温) 低温脆性に優れる 低温脆性に劣る
耐食性(錆に強いか) 優れる 劣る
製法 1ピース構造が多い 2ピース構造や3ピース構造が多い
適用車種 全般。高級車、スポーツカー、普通車での採用多い 全般。商用車、トラック等積載重量のある車、オフロード用途等耐久性重視、軽自動車等コスト重視での採用多い

材質の強度の面から見た場合、鉄鋼には疲労限があるが、アルミには疲労限がないという違いがあります。鉄鋼材料は、金属疲労が起こらない下限の応力である疲労限があり、設計上、これを超える力を受けなければ破壊されることなく、理論上は永久に使い続けられます。アルミの場合はこれがないので、応力を受け続ければ、金属疲労を引き起こすことになります。したがって、これを見越した強度設計が必要ということにになります。

材質の違いだけから見ると、耐久性やコストを重視するならスチールホイール、デザインやカスタマイズ性、燃費や走行性能を重視するならアルミホイールという選択肢となりますが、実際には加工方法とホイールの設計構造によってもバリエーションのあるホイールが存在します。例えば、肉厚で重量のあるアルミホイールがあったり、鍛造で鍛えられて強度をアップさせたアルミホイールがあったり、デザインの優れたスチールホイールがあったりといった具合です。

ホイールの選択の際には、その特徴に大きく寄与する材質が重要ではありますが、それだけでは性能や求める内容にはなりませんので、どのような特徴を持った製品なのか吟味の上、決めていく必要があります。これはつまるところ、ホイールに何を求めるのかという点とつながっています。

自動車のホイールは軽ければ軽いほどよいというものでもなく、ある程度のバランスが必要になります。自動車の走行環境では様々な負荷やストレスにされされる為、耐久性を維持する必要があります。また荷物を運搬する等の耐荷重が求められる用途でも強度が重視されます。車両の用途、道路条件、ブレーキ性能、耐久性等複数面から何を重視するかを決めて選ぶ必要があります。

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