特採申請書のフォーマット

2024年1月15日更新

特採申請書(読み方:とくさいしんせいしょ)とは、サプライヤーが納入先に対して特採(特別採用)をしないと納入ができない事態に陥った際に使用する専用のフォーマットです。各社各様ですので、納入先・客先の品質保証部門や品質管理部門に指定のフォーマットをもらい、それに必要事項を記入して提出することになります。以下、この構成について見ていきます。

特採申請書のフォーマット|目次
特採の功罪
特採申請書の構成

特採の功罪

特採とは、そもそもサプライヤー側とバイヤー側(客先側)が取り交わした品質上や仕様上のスペックに満たないものを、納入にあたってバイヤー側に例外的に認めてもらうための制度です。つまり、通常の検査では不良品としてはねられてしまうものを、不良の程度がそこまでひどくないので納入させてほしいという意味合いです。昨今の認証不正問題や検査データ等の改竄と異なり、こちらはあらかじめスペックに満たないことをサプライヤー側から納入先側にお伺いする、というものです。

ただし、特採のなかにはサプライヤーの社内のみで処理され、客先へ申請されないものもあります。これは社外にはブラックボックスとなるので、不正の温床になる可能性もあります。一旦社内で特採してしまい、それを続けていると本来のスペックに戻すことは極めて困難になり、負の遺産となります。

売り手と買い手は図面等で仕様の取り交わしをあらかじめしておきますが、このスペックに満たないというものであっても、実用上支障のないものや特別管理することで良品と同等の扱いができるもの、という建前のもと実施されているものです。

しかしながら特採品は図面の仕様を満たしていない等の不適合品であることには変わりないため、会社によってはサプライヤーに対し、市場クレーム等になった場合、求償義務に応じる必要がある等の文言を明確に記載しているケースもあります。

この制度は、製造業の分野では濫用するとそもそも取り交わしている品質上・仕様上のスペックが妥当なのかということになりますが(図面で決めた規格を外れていても特採でOKとなるというようなことだと、そもそも取り交わしている基準が意味をなさなくなります。早急に設計変更してスペックを満たしたものを納入できるようにするのが原則です)、実務ではこの制度なしではまわらなくなってしまっているものもあります。

従来の製法が設備故障や材料の調達ができなくなって取れなくなってしまった、という場合でどのように作っても従来と同じスペックにはならない、けれどこの範囲なら使う上では問題ないのではというような場合も特採申請が検討されます。あるいは以前から仕様を満たしていないものだった、というような場合もあります。

工業製品の多くはある部品を使って何かを作り、それをまた何か部品に使うというような多重構造になっています。このため、供給がどこかで止まると最終的な製品が作れなくなる、という問題があり納入をつなぐ必要性から、この制度によりつながっているようなところがあります。

特採申請書の構成

記載事項としては各社ごとに違うところがありますが、一例として以下となります。

まず、申請者(サプライヤー側)が記載する部分と、提出先となる客先側がが記載する部分とに分かれています。提出先が記載する箇所というのは、関係部門のコメントや承認印の押印欄、また最終的にその申請を可とするのか、不可とするのかの回答欄が作られています。

以下、文書例を掲載します。

特採申請書

発行日・発行番号

特採申請書の発行日(提出日)を記載します。提出先によっては発行番号を管理していることもあるため、提出先のルールに従います。

発行元会社名、部署名、担当者名、責任者名、連絡先

申請書を発行する会社情報を記入する欄となります。担当者のみで完結することは稀で、責任者の記名押印が必要となります。また部署名や連絡先も記載します。部署はほとんどのケースで品質管理や品質保証を担う部門となります。

タイトル

これも提出先のルールによりますが、特別採用の申請であることがはっきりとわかるように記載します。

製品名称・部品番号・ロット番号・図面番号等

提出する対象品を同定するための情報欄です。申請書の作成者が今回申請したい製品の正式名称や型番、部品番号、図面番号、ロット番号といった対象を特定するのに必要な情報を記載します。

オーダー番号・発注数量・納期

特採は、特定のオーダーに対して不具合があるが納入させていただけないかという打診の為の申請書です。このため、どのオーダーについての申請書かわかるようにします。すなわち、注文番号であったり、納期や個数情報、納入場所の情報等を記載します。これが出されるということは、逆に言えば、特採申請書が期日までに承認なかった場合、サプライヤー側ではなすすべがなく、納入ができないというケースも多々あります。自社で解決できるなら、そもそも客先に不適合品を納入させてほしい等という申請書を出しません。のっぴきならない事情となっていることから、納期、オーダー情報は正しく記載する必要があります。バイヤー側から見れば、期日までに承認がないとそのオーダーが遅延・欠品することになるからです。

内容・申請理由・不具合箇所・発生原因・対策・略図

申請の内容を記載していく部分です。一般的には、何が原因でどのような不具合が起きているのか、データや略図も使用しながら必要事項だけをわかりやすく簡潔に記載していきます。

また、暫定対策と恒久対策もどのように考えているのか子細を記載します。対策がないなら正直にそのように記載します。

判定欄

提出先、つまりバイヤー側が申請内容について審査し、特別採用品の納入を許可するのか、許可しないのかを記載する部分です。理由や条件、追加確認事項を記載することもあります。また、承認に関与した部署、担当、責任者も押印します。申請書の多くは、提出先の各部門にてそのまま回覧され、必要事項が記載されると窓口となる部門から提出者へ返却されるスタイルを取るケースが多いです。

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