インボイスに原産国を複数記載することはできるか

2017年6月19日更新

結論から言えばできます。

ほとんどのインボイスには原産国を表示する欄としてORIGINの欄が設けてあり、日本製であれば、JAPAN ORIGINやMADE IN JAPANといった原産国名を記載しています。これは国によっては原産国の記載なしでは通関自体できないこともあるためです。逆に言えば、原産国表示なしのインボイスでも問題のない国や地域もあります。

ただ、原則、後述する理由から、トラブルを避けたり、無用なコストをかけないために、インボイスには原産国を明記しているケースがほとんどです。

また通関時に、インボイスの原産国表示だけでは足りず、原産地証明書の提出が必須となっている国もありますが、そうした場合でもインボイスに原産地を必ずといってよいほど記載します。

これは、原産国がわからないと関税の算出ができないことと、貿易は原則、国家間によるものであるため、特定の国からの輸入や特定の国への輸出を制限することや、物品によって制限をかけたり、何らかの規制を設けたりするためです。

関税はどの国も同じではないか、特恵貿易協定を用いたものでないならば、例えば日本が中国から輸入する場合と韓国から輸入する場合とで関税に差を設けてはならないのがWTO(世界貿易機関)で定められているルールのひとつ、最恵国待遇の原則です。

ただ、このルールはWTO加盟国間の貿易に対してのものです。実質、世界のほとんどの国がWTO加盟しているとはいっても、WTO協定税率(通常の関税率となるMFN税率)を適用してよいかどうかは、原産国名の表示がなければ結局わからないことになります。

不当に安い価格で貿易を行われ、自国の産業に損害が発生するような場合にアンチダンピング税といった名目で、特定の国からの輸入品に高額な関税をかけて、輸入量を制限することがあります。これについても要件を満たせばWTOで認められているルールの一つですが、原産国名が判然としないと関税をかけ様がないと言うわけです。

特にサウジアラビアや一部の中東諸国で、原産国の表示について厳しく見る風潮がいっとき話題になったこともあります。輸入を許可するかどうかは、輸入国の判断次第のところがありますので、相手国のルールをよく調べて貿易を行う必要があります。

さて、このようにインボイスには原産国表示が原則必要となるわけですが、一通のインボイスに多数の原産国の製品がすべて記載されていることもあります。例えば、日本製、中国製、韓国製、米国製、タイ製の各製品を、すべて一通のインボイスで送る必要があるような場合はどうでしょうか。

こうした場合、インボイスに単にJAPAN ORIGINと記載するのではなく、製品名の横や真下などそれとわかる位置に、それぞれの製品の原産国名を表記する必要があります。

メーカーなどでは自社製品の輸出が多いかと思いますので、日本から輸出するものは原則、日本で製造したものが多いかとは思いますが、中にはアウトイン等と呼ばれる、海外で製造して日本へ輸入した物品を、再度別の国へそのまま輸出するようなケースもあるかと思います。物流や貿易コストの面では、グループ会社等では特段の事情がない限り、製造者と使用者が直接貿易したほうがメリットがあるのですが、なかにはそうできないケースもあるかと思います。

こうした場合で、貿易品の原産国が複数国あるような場合は、忘れずに各製品ごとにインボイスに記載し、原産地証明書を求められた場合は、証明書にも同じように製品ごとに原産国名が表示されたものを用いる必要があります。

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