船の遅延により補償請求できるか|船便の遅延責任の所在

2020年10月18日更新

国境をまたぐ貿易において船便は主要な輸送手段のひとつですが、船の遅延は世界各地のどこかしらの航路で毎日発生しているともいえる状況で、実際、船会社の責任を追求して補償請求できるケースはどのような場合でしょうか。

船の遅延は補償対象外

結論から言えば、船便の遅延で船会社や輸送会社に補償請求できる場合はほぼなく、遅延の責任を問うこともできません。

というのも、輸送業者や船会社へ輸送を依頼する際には、運送約款(うんそうやっかん)に基づいて契約していることになりますが、この中には輸送遅延についての責任は除外してあることが普通です。つまり船の遅延というのは輸送費を支払う荷主の責任になります。

貿易では取引条件でどちらの責任かあらかじめ決めておく

注意を要するのは、貿易取引においては納期が設定されて売買するため、その納期を過ぎた場合、どの部分から売り主か買い主の責任になるのかという点です。

例えば、特段に契約に定めがない場合、FOB上海の条件で日本の会社が中国の会社から製品を輸入した場合、上海港で貨物が船に積載されたあとは船便が遅れた場合については日本の会社側の責任となります。

危険負担が移転しているということになりますが、上海港から日本の輸送アレンジ、船便の選定権限が日本側にあるためです。こうした取引において、日本側の買い主が輸送会社に遅延による損害について何らかの賠償を要求するといったことは不可能ということになります。

運送約款でカバーできないものは保険で

運送約款は、運送人の責任の範囲や限度額、免責等の内容が細かく規定されており、各輸送会社でおおむね共通している条項が多く、これがすなわち貿易上の輸送責任の商習慣ともなっています。

この運送する上での契約である運送約款でカバーできないリスクについては、貨物保険や貿易保険をかけて荷主側はリスクヘッジすることになります。万が一の場合は、保険によって金銭補償を得る、ということです。

ただ、この貨物保険でも通常の保険では船便の遅延や航空便の遅延についてはカバーされません。遅延だけでなく、経時変化による品質劣化(錆や腐敗など)や梱包が原因の問題、製品の一部が自然に減ってしまう性質のものなども損害補償の対象からは除外されています。

一部の損保が輸送遅延による損害をカバーする保険を販売していますが(通常の保険に特約という形でつける)、1日、2日遅れというようなものは困難で、5日以上遅延等の条件になっています。また、支払われる金額が上限でもコンテナ1本あたり30万円前後となることから、遅延したことによりコンテナ1本をすべてエアー便で代替した場合の費用に比べると、重量にもよりますが補填できないことがほとんどです。

船便の遅延をどう予測、想定するか

船便での貿易を行う場合、納期がシビアなものや遅延による大きな損害があるようなものの場合、あらかじめ船が遅れることを前提にしておくほうが無難です。船便の遅延は、天候だけでなく、その前後の船の影響を受けたり、特定の港での混雑が影響したり、本来その船とは関係のないところで起きている事故が遠因になっていたりする場合もあり、いつ発生するかの予測が困難という事情があります。

一定期間その航路の船会社のサービスを使用していると大体この割合で発生し最大どれくらい遅延するという感覚に頼る方法もありますが、はじめて使う船便や航路の場合はこうした方法は困難です。

船便が遅延したとして、エアー便等で挽回ができるのか、その日数や費用はといった点からどの程度の遅延を見ておくべきかあらかじめ幅を設けておくことはできます。

船便しか手段がなく挽回もできない場合は、相当な遅延が起きても大丈夫なよう安全の幅を大きく見ておく必要があります。例えば遅延が判明してから次の船便で頼んでも間に合うかといった観点からも検討が必要です。

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