ポリエステル繊維の特徴|ポリエステルの種類から原料、用途、強度、比重、耐熱温度等の物性まで

2016年1月3日更新

ポリエステル繊維は、化学繊維としてはアクリルと並んで最も使用量・生産量の多い繊維です。化学繊維の中でも石油等、化学的に合成された原料のみから作られる「合成繊維」に分類されます。

ポリエステルはプラスチックとしての利用も盛んで、エステル基をもつものに対して使われる名称ですが、繊維としてよく使われる種類は数種類となります。PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリブチレンテレフタレート)が代表的なポリエステル繊維ですが、現状はほとんどがPET繊維となります。PET樹脂はペットボトルの原料でもあるため、材料の入手が容易で、価格も安くすみ、限られた資源ともなっている他の天然繊維に比べて市場に多く出回っています。衣服の約半数がこのポリエステル繊維ともいわれているほどポピュラーな素材です。

衣類としては、しわになりにくく、速乾機能をもつため、手入れが容易ということもあり、飛躍的に普及しました。工業的な生産は、1953年に米国のデュポン社がダクロンの名称で製造開始したのがはじまりとなります。

代表的なポリエステル繊維の種類

前述のとおり、ポリエステル繊維には複数の種類があります。

ポリエステル繊維の種類
ポリエステルの種類 記号、略称 性質、特徴
ポリエチレンナフタレート PET繊維 ペットボトルの原料としてもよく知られるが、繊維としては衣服のほぼ半数がこのPET繊維。耐熱性、強度ともに優れており、軽くて染色性もよい。糸の形状を製造時に変えたり、他の素材を練りこんで特殊な性質を持たせることも可能。原料価格も安い。
ポリエチレンナフタレート PEN繊維 PET繊維よりも強度に優れる。またガスバリア性、紫外線バリア性が高く、酸素や水蒸気が透過しにくい。このため、フィルムとしての利用もなされている。
ポリトリブチレンテレフタレート PTT繊維 高い伸縮性をもち、形状安定性、形状記憶などに特徴がある。また柔らかい肌触りであるため、肌に直接触れる衣類としても使われる。
ポリブチレンテレフタレート PBT繊維 伸縮性に優れたポリエステル繊維ですが、PET繊維に比べ生産量が限られています。

ポリエステル繊維の原料と作り方

ポリエステル繊維のおおもととなる原料は石油です。石油から、エチレン、パラキシレンに分離されたそれぞれの物質は、重合という工程を経て、ポリエステルの小さなチップ(小さなペレット状)のものに加工されます。このチップを液体状態に溶かして、穴の開いた紡糸口金(ノズル)を通して巻き取っていくことで糸に加工されます。

ポリエステル繊維の製造には、溶融紡糸と呼ばれる方法が一般的に使われます。紡糸とは、糸をつむぐと書きますが、文字通り、「糸を製造する」工程です。

まず、原料となる高分子、この場合はポリエステルのチップをヒーターで加熱して溶かします。この溶かして液体状にしたものを、小さな穴のあいたノズルを通して押し出し、空気冷却しつつ、液体から糸の形状をした固体へと形を変えていき、それをそのまま巻き取っていきます。紡糸に使う口金の形状を変えることで、断面が丸だけでなく、多角形のものを作ることも可能です。また複合紡糸といって、ナイロンとポリエステルを一本の繊維として製造する技術も確立されています。天然繊維にある「中空構造」をもつ繊維も製造可能です。

ポリエステル繊維の性質と特徴

丈夫で取り扱いが簡単なポリエステル繊維の衣料ですが、その繊維には実はほとんど吸水性がありません。すぐ乾く、いわゆる速乾性能をもつのはこれが理由です。またしわにもなりにくいです。

ポリエステル繊維の構造

繊維はなめらかな側面をもちますが、合成繊維ゆえ、繊維構造自体を異形にしたり、難燃性や制電性をもたせたりするような加工も行われています。基本的には天然繊維と異なり、繊維の中心は中空になっておらず詰まっていますが、中空にすることも可能ではあります。なお、繊維の形状というのは吸水性や速乾性能をはじめ、物理的な性質に影響を及ぼす要素のひとつです。高機能な衣料では、意図的にこうした繊維形状にしたものが使われることあります。

化繊のため、長繊維(フィラメント糸)と呼ばれる単糸で構成される繊維ですが、意図的に短繊維(ステープル)として製造して、紡績工程を行って糸にすることもあります。このとき、綿や毛、アサなどの天然繊維と混紡して、互いの長所を取り入れた繊維として使われることもあります。

また繊維の太さは、紡糸口金(ノズル)の大きさによって自由に変えられるため、絹の100分の1の細さというような極細の繊維も存在します。

ポリエステル繊維の長さ、太さを表す単位

他の化学繊維と同様に、デシテックス(10dtex = 1tex)が最もよく使われる単位です。

ポリエステル繊維の用途

衣料品としての利用が多いですが、洋服のほか、和服にも使われます。またスポーツウェアや登山ウェアなどの発汗や速乾が要求される用途でもよく使われます。他、カーテンやテーブルクロス、布団などのインテリアや産業用ではろ過布やベルト、各種布、人工皮革や合成皮革の素材としても使われます。また自動車用のタイヤの補強用の素材にも使われています。

ポリエステル繊維のメリット、デメリット

以下に繊維としてのポリエステルのメリット、デメリットを見ていきます。

ポリエステル繊維のメリット

強度が高く、濡れても強さに変化はありません。摩擦にも同様に強い耐性を持ちます。日常利用の範囲では、熱にも強い部類です。しわになりにくく、しわの回復もはやい素材です。日光に強く、耐候性にも優れます。形状がすぐに元通りになります。吸湿性、吸水性が低いため、乾きがはやい特徴を持ちます。熱可塑性があるため、折り目やプリーツのある衣服も、洗濯後にこれらがきちんと残ります。薬品全般に強く、石油由来のため、虫害などもないです。

ポリエステル繊維のデメリット

汚れを吸い取る性質があるため、汚れのひどいものと一緒につけておくと逆汚染と呼ばれる現象が起きます。吸湿、吸水、吸汗性能については、繊維自体にはそうした性質がありません。衣類に加工した際には、繊維形状によってこれら水分を吸って乾燥させるという機能を持たせているため、速乾性能がうたわれています。他の繊維と組み合わせて衣服として使われることが多い理由のひとつです。ポリエステル100のTシャツもよく出回っていますが、綿や麻ほどの肌触りのよさはありません。繊維が特殊加工されたものは天然繊維と見まがうような肌触りのものも出てきてはいます。

また火を使う現場や、火の粉が飛び交うような作業場での作業着やユニフォームには綿は適していますが、火の粉をうけるとポリエステルはすぐに溶けてしまうため、あまり適していません(耐熱や耐火性能のない化学繊維全般に言えることですが・・・)。逆に薬品を使う現場には強い耐薬品性があるので向いています。

ポリエステル繊維の性能

次にポリエステル繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

ポリエステル繊維の比重

比重は1.38となっています。水に浮きませんが、そこそこ軽い繊維です。

ポリエステル繊維の公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

ポリエステル自体は吸水性能や吸湿性はほとんどなく、公定水分率も0.4%となっています。

ポリエステル繊維の耐熱性

ポリエステルは化学繊維としては熱に強い繊維です。

ポリエステル繊維の持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

高耐熱用途の繊維には劣りますが、通常利用では天然繊維よりも強いです。

ポリエステル繊維の耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 238℃から240℃
溶融点 255℃から260℃
耐候性 長期間の外気曝露でも強度はほとんど低下しない

ポリエステル繊維の引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

化繊の中では強いほうですが、高強度繊維ほどではありません。廉価であるため、汎用品としての利用が多いといえます。

ポリエステルは、長繊維(フィラメント)と短繊維(ステープル)の両タイプが製造されているため、それぞれでパラメータを比較して見ます。

ポリエステル繊維の引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
ポリエステル繊維 フィラメント:3.8から5.3
ステープル:4.1から5.7
フィラメント:3.8から5.3
ステープル:4.1から5.7
フィラメント:20から32
ステープル:20から50

ポリエステル繊維の化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

ポリエステル繊維は薬品には強いです。とくに酸に強い点は特筆すべき点ともいえます。アルカリには注意が必要ですが。

ポリエステル繊維の耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶けない
塩酸(20%、室温) 溶けない
硫酸(70%、室温) 溶けない
ギ酸(80%、室温) 溶けない
氷酢酸(煮沸) 溶けない
特殊溶剤 フェノール誘導体

繊維の種類と特徴

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