ポリクラール繊維の特徴|ポリクラールの耐熱性、強度、比重などの物性

2016年1月3日更新

ポリクラールは化学繊維のうち、合成繊維に分類されます。原料は、塩化ビニルの重合によって作られるポリビニルアルコールですが、衣服の用途で使われることがほとんどないため、一般にはあまりなじみのない繊維かもしれません。その用途のほとんどが難燃性を主眼にしたカーテンやカーペット、マットなどの内装品や災害時の持ち出し袋や手持ち式の金庫、防火袋といった使い道となります。

ポリクラールの性質と特徴

燃えにくい特徴を持つことで知られ、帯電やピリングもしにくい繊維です。この繊維の製法は、特殊な作り方というわけではなく、他の化繊と同様に、湿式紡糸によります。

また、ポリクラールには熱水に溶けるものと、溶けにくいものとがあります。

化学薬品については、強酸へは部分溶解する性質を持ち、難燃ではありますが、耐熱性も高くはありません。

ポリクラール繊維の長さ、太さを表す単位

化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。

ポリクラール繊維の用途

難燃性からカーテンやカーペットといった内装品、また防火袋、火災時の持ち出し袋といった使われ方をしています。なお、燃えにくいからといって高温に耐える「耐熱性」とは異なりますので、耐熱性能が求められる用途では使われません。

ポリクラールのメリット、デメリット

燃えにくいことを目的にした使われ方をするため、それ以外の長所についてはあまり語られること自体が少ないかもしれません。

ポリクラール繊維のメリット

難燃性であり、耐摩耗性にも優れます。伸びの程度は塩化ビニルと同程度であり、他の化繊ともほぼ同等です。また染色性にも優れます。化繊であるため、防虫や防カビにも強い性質です。

ポリクラール繊維のデメリット

製造時に複数の成分を混合する必要があります。また、他の化学繊維に比べて、難燃性は突出しているものの、他のパラメータではあまりパッとせず、燃焼を防ぐという目的以外で使用するメリットがなかなか見出されていない繊維です。感触は羊毛のような風合いを持ちますが、ウールやアクリルを代替する繊維にはなっていません。

ポリクラールの性能

次にポリクラール繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

ポリクラール繊維の比重

比重は1.32で、天然繊維ではウールや絹、化繊ではポリエステル繊維等とほぼ同等です。

ポリクラールの公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

ポリクラールの公定水分率は3%となっており、化繊では比較的高いレベルです。ただし、非親水性の繊維ではあります。

ポリクラールの耐熱性

燃えにくい素材ですが、軟化する温度は180℃前後からとなっています。

ポリクラールの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

ポリクラールの耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 180℃から200℃
溶融点 不明瞭
耐候性 外気曝露しても強度はほとんど低下しない。

ポリクラールの引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

湿強度が低くなる、つまり濡れると強度が下がる特性があります。

ポリクラールの引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
ポリクラール 2.5から2.9 1.8から2.0 20から24

ポリクラールの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

タイプによっては熱水自体に弱いものもありますが、一般に酸性の溶液には部分的に溶解する傾向を持ちます。

ポリクラールの耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶けない
塩酸(20%、室温) 溶けない、もしくは部分的に溶ける
硫酸(70%、室温) 部分的に溶ける
ギ酸(80%、室温) 部分的に溶ける
氷酢酸(煮沸) 溶けない
特殊溶剤 NA

繊維の種類と特徴

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