アクリル繊維の特徴|アクリルの強度、耐熱温度、用途、特性、構造とメリットからデメリットまで

2016年1月3日更新

アクリルは化学繊維のなかで、合成繊維に分類される素材です。石油を原料とする繊維ですが、羊毛(ウール)に似た性質持つことが知られています。このため、ウールとの違いや比較についても検討対象とされることが多い繊維といえます。アクリルには、「アクリル繊維」と「アクリル系繊維」の別があり、両者は性質も異なるものです。

化学繊維であるため、糸を作る際の口金(ノズル)の形状によってさまざまな形状の繊維をつくることができ、これによって手触りや風合いの異なるアクリル繊維を作り出すことができます。また、本来はアクリル繊維の弱点でもあった抗菌防臭や静電気防止、耐熱性向上、毛玉が発生しにくいものなどの機能性を付与したものもあります。

水に浮くほどではありませんが、繊維のなかでは軽い部類になります。

なお、プラスチックのアクリル樹脂はPMMAのことであり、アクリル繊維とは異なる材料となりますので留意が必要です。

アクリルとアクリル系繊維の違い

アクリル繊維と、アクリル系繊維は別のものとして区別されています。

アクリルとアクリル系
アクリル ポリアクリロニトリルが85%以上のもの
アクリル系 ポリアクリロニトリルが35から85%、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを含む

アクリル繊維の作り方と原料

原料となる石油から取り出されたプロピレンとアンモニアを混ぜ、アクリロニトリルが作られます。これに共重合原料が混ぜられ、共重合物が作られます。これを湿式紡糸か乾式紡糸のいずれかで糸を作っていきます。加熱すると溶ける前に分解してしまう性質をもつため、溶融紡糸ではなく、溶液紡糸と呼ばれる技法が使われます。

糸の製造工程で巻き取っていくものはアクリル長繊維(フィラメント)となり、切断したものがアクリルステープル(短繊維)となります。産業上はステープルの利用が多い繊維です。

なお、アクリル繊維はアクリロニトリルを酢酸ビニルやアクリル酸メチルと共重合させたものですが、アクリル系繊維は、塩化ビニルや塩化ビニリデンと共重合させて難燃性を持たせた繊維です。

蛇足ですが、炭素繊維はアクリル繊維を蒸し焼きにして作られます。

アクリル繊維の性質と特徴

ふんわりとした羊毛のような軽さと暖かさを兼ね備えた繊維です。静電気発生と毛玉発生がネックではありますが、発色も良いため、意匠もさまざまなものがあり、衣料品をはじめとする消費財に多用されます。本家のウールよりも、安価というのも消費を促す要因ともなっています。

アクリル繊維の構造

化繊であるため、繊維形状には扁平な断面のものからハート形状のものまで各種存在します。断面がハート形状のアクリル繊維は、繊維側面にひとつの筋が通っているように見えます。フィラメント糸(長繊維)も製造可能ですが、ステープル(短繊維)としての利用が多い繊維です。かさ高性、バルキー性ともいわれるふんわり感を出すことが可能な繊維であるため、短繊維を加工した紡績糸が多く作られています。

また、毛との混紡や他の繊維とも混紡もよく行われます。

アクリル繊維の長さ、太さを表す単位

化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。

アクリルに使われる染料

塩基性の染料でカチオン染料がよく使われます。この染料は酸性で色落ちしやすいという難点はありますが、高い耐光性を持ちます。

アクリル繊維の用途

ウールに似ているため、その代替品としての利用が多いです。セーターや靴下をはじめとするニット製品や、毛布やカーペット、カーテン、クッション、かつら、ぬいぐるみ、カバン地、テント、シート等での用途です。工業分野では、ろ過布やアスベストの代替品としても使われています。

アクリルのメリット、デメリット

アクリル繊維は主としてウール系統の衣類との比較になることが多い素材です。

アクリル繊維のメリット

羊毛よりも軽い繊維で、化繊としては珍しいかさ高い風合いを出すことができる素材です。保温性、染色性(発色性)、弾性回復率がよく、しわになりにくい素材です。ポリエステル同様に熱可塑性があります。日光に強く、耐候性もあります。外気に長時間さらしても強度はほとんど変わらず、乾湿でも違いはあまり出ません。

アクリル繊維のデメリット

静電気が発生しやすいこと、ピリングと呼ばれる毛玉が発生しやすいことがデメリットとして挙げられます。また天然の毛のような吸水性、保湿性がないため、登山ウェアなどのインナーとしてはあまり採用されていません。

アクリル繊維の性能

次にアクリル繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

アクリル繊維の比重

アクリル繊維の比重は1.14から1.17、アクリル系繊維の比重は1.28となります。

アクリルの公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

アクリル、アクリル系ともに公定水分率は2%となります。

アクリル繊維の耐熱性

耐熱性についてもそこそこあるほうです。190℃前後から軟化していきますが、日常使いではあまり気にすることもないでしょう。

アクリルの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

アクリル繊維の耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 190℃から240℃(アクリル)
150℃(アクリル系)
溶融点 不明瞭
耐候性 外気に長時間曝露されても強度はほとんど低下しない

アクリル繊維の引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

下記はいずれもアクリルステープルの物性値です。

アクリル繊維の引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
アクリル 2.2から4.4(アクリル)
1.9から3.5(アクリル系)
1.8から4.0(アクリル)
1.8から3.5(アクリル系)
25から50(アクリル)
25から45(アクリル系)

アクリル繊維の化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

アクリル繊維の耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶けない
塩酸(20%、室温) 溶けない
硫酸(70%、室温) 溶けない
ギ酸(80%、室温) 溶けない
氷酢酸(煮沸) 溶けない
特殊溶剤 ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド(アクリル)
アセトン、ジメチルホルムアミド(アクリル系)

繊維の種類と特徴

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