アセテート繊維の特徴|アセテート生地の洗濯から強度、耐熱性、欠点まで

2016年2月15日更新

アセテートは化学繊維の中でも、半合成繊維と呼ばれるカテゴリーに入れられる繊維です。半合成繊維とは、天然原料から得られる成分に、化学薬品を用いて繊維状に加工したもので、主にセルロース系(アセテート、トリアセテート)とタンパク質系(プロミックス)があります。

原料はパルプのため、レーヨン等の再生セルロース繊維と同じですが、このアセテートは無水酢酸を加えて、アセテートフレークを作った後にアセトンを加えて繊維に加工していくことから合成繊維の側面も持ち合わせています。

品質表示上は、アセテート繊維のうち、「水酸基の九二パーセント以上が酢酸化されているものについてはアセテート、トリアセテート、ACETATEのいずれの表示も許されることになっています。

アセテート自体は繊維としてだけでなく、日用品としてはメガネのフレーム等にも使われます。

アセテートの性質と特徴

アセテートは、絹のような風合い、肌触りを持ち、吸湿性や吸水性も適度にある繊維です。熱や摩擦には強くないですが、プリーツ性もあるため、デザインが重要となる服飾分野では活用されています。

洗濯をする際には、しわになりやすい点と、繊維自体の強度が水に濡れるとさらに低下する点に気をつける必要があります。ごしごし擦るような洗い方には適しません。また染み抜きように溶剤を用いると、繊維自体がアセトン等に反応して溶けてしまいます。

アセテート繊維の構造

繊維断面はクローバーの葉のような形状をしています。繊維方向には数本の線条が走っており、この辺りはレーヨンにも似ています。

アセテート繊維の長さ、太さを表す単位

アセテートは化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。

アセテート繊維の用途

プリーツ性や絹のような風合いから婦人服によく使われます。フォーマルウェア、ナイティ、ワンピース、ブラウス、セーター等。インテリア用としてはカーテンの用途もあります。

また他の使われ方としては、たばこのフィルターには、セルロースの三つの水酸基のうちの二つがアセチル基に置換されたジアセテートが使われています。

アセテートのメリット、デメリット

意匠性が重要となるような衣料で活躍する繊維ですが、強度自体は強くありません。

アセテート繊維のメリット

絹のような光沢を持ちつつ、プリーツ性があり、熱可塑性があるため、プリーツが元に戻ります。

保温性、吸湿性、弾力性がある繊維で、ふっくらした毛のような風合いを持ちつつ、軽い繊維です。

アセテート繊維のデメリット

強度には難があります。また、しみ抜き等に用いるアセトン、シンナーなどの溶剤に溶ける性質があるため、耐薬品性をあてにした使い方には注意を要します。また熱や摩擦にも強くありません。

アセテートの性能

次にアセテート繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

アセテート繊維の比重

比重は1.32と毛とほぼ同じです。

アセテートの公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

公定水分率は6.5となっており、毛やレーヨンほどではありませんが、吸湿性・吸水性があります。

アセテートの耐熱性

繊維としては、200℃をこえると軟化していきます。なお、トリアセテートのほうが耐熱性には優れています。

アセテートの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

アセテートの耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 200℃から230℃
溶融点 260℃
耐候性 長期曝露によってもほとんど強度は低下しない。

アセテートの引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

強度は強くないので、扱いには注意が必要です。

アセテートの引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
アセテート フィラメント:1.1から1.2 フィラメント:0.6から0.8 フィラメント:25から35

アセテートの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

アセテートの耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶けない
塩酸(20%、室温) 溶けない
硫酸(70%、室温) 溶ける
ギ酸(80%、室温) 溶ける
氷酢酸(煮沸) 溶ける
特殊溶剤 アセトン、フェノール

繊維の種類と特徴

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