FCV300の機械的性質、引張強さ、耐力、伸び、硬度、ポアソン比、熱伝導率、熱膨張率|CV黒鉛鋳鉄品の規格

2013年7月24日更新

FCV300は、CV黒鉛鋳鉄品のうち、高い熱伝導率をもち、弾性係数が低いグレードです。こうした特性により、受けた熱が内部に滞留しないため、熱応力の蓄積を最小限にすることができます。規格に規定される5種は、どれも熱膨張係数は変わりませんが、熱伝導率についてはこのFCV300が最も高くなります。

用途としては、エキゾーストマニホールド、船舶用シリンダヘッドや、定置式エンジン用シリンダヘッドなどが知られます。

CV黒鉛鋳鉄そのものは、ねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の中間的な性能・物性を持つ材料となります。金属組織は主としてフェライトです。

FCV300の機械的性質

FCV300の引張強さ、0.2%耐力、伸び、硬度
【別鋳込みの場合】
CV黒鉛鋳鉄の種類 引張強度
N/mm2
0.2%耐力
N/mm2
伸び
ブリネル硬さ
HBW 10/30(参考値)
FCV300/S 300以上 210以上 2.0以上 140から210
FCV300の引張強さ、0.2%耐力、伸び、硬度
【本体付きの場合】
CV黒鉛鋳鉄の種類 厚み t(対象となる肉厚)
mm
引張強度
N/mm2
0.2%耐力
N/mm2
伸び
ブリネル硬さ
HBW 10/30(参考値)
FCV300/U t≦12.5 300以上 210以上 2.0以上 140から210
12.5<t≦30 300以上 210以上 2.0以上 140から210
30<t≦60 275以上 195以上 2.0以上 140から210
60<t≦200 250以上 175以上 2.0以上 140から210

温度によるFCV300の機械的性質、物理的性質の変化

FCV300の機械的性質、弾性係数、疲労限度、ポアソン比、密度、比重、熱伝導率、熱膨張係数、比熱
物理特性・熱的特性 単位 温度 FCV300
引張強度 N/mm2 23℃ 300から375
100℃ 275から350
400℃ 225から300
0.2%耐力 N/mm2 23℃ 210から260
100℃ 190から240
400℃ 170から220
伸び 23℃ 2.0から5.0
100℃ 1.5から4.5
400℃ 1.0から4.0
弾性係数 kN/mm2 23℃ 130から145
100℃ 125から140
400℃ 120から135
疲労限度比、回転曲げ疲労試験 23℃ 0.50から0.55
疲労限度比、引張圧縮疲労試験 23℃ 0.30から0.40
疲労限度比、3点曲げ疲労試験 23℃ 0.65から0.75
ポアソン比 - - 0.26
密度、比重 g/cm3(密度) 7.0
熱伝導率 W/(m・K) 23℃ 47
100℃ 45
400℃ 42
熱膨張係数 μm/(m・K) 100℃ 11
400℃ 12.5
比熱 J/(g・K) 100℃ 0.475

「JIS G 5505 CV黒鉛鋳鉄品」に規定のある材料記号

スポンサーリンク

>このページ「FCV300の機械的性質、引張強さ、耐力、伸び、硬度、ポアソン比、熱伝導率、熱膨張率|CV黒鉛鋳鉄品の規格」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

FCV300の機械的性質、引張強さ、耐力、伸び、硬度、ポアソン比、熱伝導率、熱膨張率|CV黒鉛鋳鉄品の規格の関連記事とリンク

鋳鉄とは
ねずみ鋳鉄品(FC材)の用途、機械的性質、成分の一覧
球状黒鉛鋳鉄品(FCD材)の用途、機械的性質、成分の一覧
可鍛鋳鉄の種類、用途、特性、記号|白心可鍛鋳鉄、黒心可鍛鋳鉄、パーライト可鍛鋳鉄の特徴と性質
耐熱鋼鋳鋼品、SCHの種類と用途、成分、耐熱温度など
金属の低温脆性
高温高圧用鋳鋼品|SCPH材の特性、成分、材質、比重、機械的性質の規格
SCS(ステンレス鋳鋼品)の種類と材質、成分、規格
アルミニウム合金鋳物の種類の一覧
アルミダイカスト(ADC材)の成分と種類、特徴|材質、比重、機械的性質など
銅合金鋳物、鋳造品の用途、成分、種類、記号について
炭素鋼鋳鋼品(SC材)
溶接構造用鋳鋼品(SCW材)
構造用合金鋼鋳鋼品(SCC, SCMn, SCMnCr, SCCrM等)
高マンガン鋼鋳鋼品(SCMnH材)
鋳鉄の比重について
鋳鉄の耐熱温度はどれくらいか
ニクロシラルとは
ニレジストとは
耐食鋳鉄とは
耐熱鋳鉄とは
チルド鋳鉄とは
ミーハナイト鋳鉄とは
可鍛鋳鉄とは
フェライト
パーライト
オーステナイト
鍛造と鋳造の違い
鋳造と鍛造の使い分け
炭素鋼鋳鋼品(SC材)の用途、機械的性質、成分の一覧
鋼、鉄、鋳鉄はそれぞれ何が違うか
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
金属の熱伝導率の一覧表
鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
金属単体の比重、密度の一覧表
金属の融点、沸点の一覧表
金属の熱伝導率の一覧表
金属材料の硬度の一覧と比較
鉄鋼材料の種類
炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
合金元素の果たす役割
鉄鋼、炭素鋼、合金鋼の焼入れ深さ
焼入れ性とは

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集