Cr2O3（酸化クロム）の特性
Cr2O3(酸化クロム）は、赤外域に透過波長域を持ち、光学系では吸収膜、エレクトロクロミック用途等に使われます。光学特性（屈折率、透過率）は基板温度に強い影響を受けることが知られています。Cr2O3の膜質は丈夫で、耐腐蝕、酸化防止、耐磨耗性、密着力を付与するためにも使われます。なお、三価クロム（Cr2O3）はRoHS指令で規制されている六価クロムとは異なり、安定した物質ですが、加熱や熱処理等の環境（２００℃以上）によりごく一部の三価クロムが六価クロムに変わる可能性もあるとされており、注意が必要です。
| 屈折率 | 2.24-i0.07(700nm近辺)※４ |
|---|---|
| 使用波長域 | 1.2-10 ※４ |
| 蒸発方法 | EB（電子ビーム）、RH（抵抗加熱） |
| 蒸発源材料 | タングステン、モリブデン |
| 蒸発タイプ | - |
| 膜質 | - |
| 応力 | - |
| 主な用途 | 吸収積層膜、反射膜、反射防止膜、硬化膜、磁性膜 |
| 理論密度 | 5.21g/cm3 |
|---|---|
| 融点 | 2435℃ |
| 沸点 | 4000℃ |
| 性質 | 水溶性：不溶 耐薬品性(酸、アルカリ)：不溶;エタノール※１ |
| 結晶構造 | 三方晶系 ※３ |
| 抵抗率ρ/10^-8Ωm | 1.3 x 10^9 温度(θ/℃)350 ※２ |
| 誘電率、比誘電率εγ | - |
| 熱膨張係数 | - |
| 熱伝導率（cal/cm/sec/℃） | - |
| 比熱(cal/℃/mole) | - |
| 外観 | 緑色、深緑 |
| CAS-NO | 1308-38-9 |
| 輸送情報 | 輸出貿易管理令（リスト規制非該当） |
参照文献
- ※１：［日本化学会編，“化学便覧 基礎編 改訂5版”，丸善（2005），p.Ⅰ-201］
- ※２：［日本化学会編，“化学便覧 基礎編 改訂5版”，丸善（2005），p.Ⅱ-612］
- ※３：前掲 p.Ⅱ-838
- ※４：光学薄膜と成膜技術 李正中 署 株式会社アルバック訳 アグネ技術センター２００５年８月３０日初版第三刷
専門誌等で発表されているCr2O3の薄膜に関する研究論文
| 掲載誌 | Optical Materials 29 (2007) 709-713 |
|---|---|
| タイトル | "Optical properties of chromium oxide thin films deposited by electron-beam evaporation" |
| 著者 | M.F.Al-Kuhaili, S.M.A.Durrani |
| 概要 | 電子ビーム(EB)蒸着によるCr2O3膜の、蒸着時の基板温度が膜の構造的、化学的、光学的特性にどのような影響を与えるのか調査した研究論文 |
| 掲載誌 | APPLIED OPTICS Vol.36 No.10 / 1 April 1997 pp.2157-2159 |
|---|---|
| タイトル | "Optical and durability properties of infrared transmitting thin films" |
| 著者 | Jennifer D. Traylor |
| 概要 | 赤外域（0.6～1.2μm）における１４種類の酸化物、フッ化物の薄膜の光学特性と耐久性を調べた研究。Cr2O3のほか、Bi2O3、HfO2、Ta2O5、Y2O3、ZrO2、CaF2、CeF3、HfF4、LaF3、NdF3、PbF2、SrF2、YbF3を実験で用いている。 |
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