金属の引張強さの一覧|金属材料の引張強さを比較する

2015年9月1日更新

引張強度は、破断限界をみるためのパラメータで降伏点とあわせて使うことで材料の持つ「強度」をみる為の指標です。

引張強さとはごく簡略化していえば、両サイドから材料を引っ張り、千切れるまでの力がどれくらいか、を数字で示したものです。

実務上は引張強度にあわせて設計するというよりは、それ以上力を加えると変形して元に戻らなくなる「降伏点(耐力)」を基準にすることが多いですが、これは多くの部品や機械等において、変形して元に戻らなくなる「永久ひずみ」が生じてしまうと、意図した機能が損なわれてしまうからです。

ほとんどの材料については、引張強さと圧縮強さも類似していると言えますが、一部、コンクリートのように圧縮には非常に強いものの、引張強度は高くないという材料もある為、こうしたものについてはどういう力が加わるのかという点を検討する必要が出てきます。とくに、硬くて脆いとされる硬脆材料(こうぜいざいりょう)については、圧縮に比べて引張強度が弱い材料も散見されますので、どちらの方向に力が加わる設計となっているのか、様々な可能性を考慮する必要があります。

鉄筋コンクリートはコンクリートの中に鉄筋を入れた構造材料ですが、これは引張強度があまり強くないコンクリートの中に、引張強さに優れる鉄鋼材料を入れることでバランスをはかる意図があります。

また、材料によっては引張強さは硬度ともある程度比例していきます。

なお、鋼線、ピアノ線などの針金の径が細いほどに引張強度が高くなるのは、製造工程上、伸線により引き伸ばされて製造されているため、より強靭な金属組織を持つことが理由です。

金属材料の引張強さの一覧表
金属の種類 材料記号・熱処理 主な組成 引張強さ(T/MPa)
純鉄(99.96%)焼鈍し - 99.96 Fe 196
一般構造用圧延鋼材 SS400(焼鈍し) Fe -0.1C 450
冷間圧延鋼板 SPCC Fe -0.15以下 C 270以上
機械構造用炭素鋼 S45C(焼入れ焼き戻し) Fe-0.45C-0.25 Si-0.8 Mn 828(690以上)
機械構造用炭素鋼 S45C(焼ならし) Fe-0.45C-0.25 Si-0.8 Mn 570以上
機械構造用炭素鋼(軟鋼) S12C(焼ならし) Fe-0.12C-0.15〜0.35 Si-0.30〜0.60 Mn 370
機械構造用炭素鋼(硬鋼) S55C(焼入れ焼き戻し) Fe-0.55C-0.15〜0.35 Si-0.60〜0.90 Mn 780以上
ピアノ線 SWP-V 線材規格による 2010から2210(線径1mm)
鉄筋コンクリート用棒鋼 SD345 Fe-0.27以下 C-0.55以下 Si-1.60以下 Mn 490以上
鉄筋コンクリート用棒鋼 SD490 Fe-0.32以下 C-0.55以下 Si-1.80以下 Mn 620以上
機械構造用炭素鋼鋼管 STKM15C Fe-0.25から0.35 C-0.35以下 Si-0.30から1.00 Mn 580以上
建築構造用圧延鋼材(ガイドライン鋼材、SN材) SN400C(16mmと想定) Fe-0.20以下 C-0.35以下 Si-0.60から1.50 Mn 400以上510以下
自動車構造用熱間圧延鋼板(ハイテン材) SAPH400(6mmと想定) NA 400以上
熱間圧延軟鋼板 SPHC Fe-0.12以下 C-0.60以下 Mn 270以上
高張力鋼 HT80(焼入れ焼き戻し) Fe-0.12C-0.8Mn-1.0Ni-0.5Cr-0.4Mo 865
クロム鋼 SCr430(焼入れ焼き戻し) Fe-0.28から0.33C-0.15から0.35 Si-0.60から0.90 Mn-0.90から1.20Cr-0.25以下 Mo 780以上
マンガン鋼 SMn438(焼入れ焼き戻し) Fe-0.35から0.41C-0.15から0.35 Si-1.35から1.65 Mn-0.35以下 Cr-0.25以下 Ni 740以上
マンガンクロム鋼 SMnC420(焼入れ焼き戻し) Fe-0.17から0.23C-0.15から0.35 Si-1.20から1.50 Mn-0.35から0.70 Cr-0.25以下 Ni 830以上
クロムモリブデン鋼 SCM440(焼入れ焼き戻し) Fe-0.4C-0.7Mn-1.0Cr-0.25Mo 980以上
ニッケルクロムモリブデン鋼 SNCM439(焼入れ焼き戻し) Fe-0.40C-0.30Si-0.70Mn-1.85Ni-0.80Cr-0.25Mo 1765(980以上)
ニッケルクロム鋼(SNC815) SNC815(焼入れ焼き戻し) Fe-0.12から0.18 C-0.15から0.35 Si-0.35から0.65Mn-3.00から3.50Ni-0.60から1.00Cr 980以上
ダイス鋼(合金工具鋼) SKD6(焼入れ焼き戻し) Fe-0.37C-1.0Si-5.0Cr-1.25Mo-0.4V 1550
ばね鋼 SUP7(焼入れ焼き戻し) Fe-0.6C-2.0Si-0.85Mn 1230
低温圧力容器用ニッケル鋼鋼板 SL9N590(焼入れ焼き戻し) Fe-0.05C-0.3Si-0.9Mn-9.0Ni 760
マルエージング鋼 350級(焼鈍し、時効処理) Fe-17.5Ni-12.5Co-3.75Mo-1.8Ti-0.15Al 2403
析出硬化系ステンレス鋼 SUS631(焼き戻し、時効処理) Fe-0.06C-0.4Si-0.6Mn-7.0Ni-17.0Cr-1.2Al 1225
マルテンサイト系ステンレス鋼 SUS410(焼入れ焼き戻し) Fe-0.15>C-1.0>Si-1.0>Mn-12.5Cr 540
フェライト系ステンレス鋼 SUS430(焼き鈍し)) Fe-0.12>C-0.75>Si-1.0>Mn-17Cr 450
オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304(固溶化処理) Fe-0.08>C-1.0>Si-2.0>Mn-9 Ni-19 Cr 520以上
析出硬化系ステンレス鋼 SUS630(H900:固溶化処理後、470〜490℃で空冷) Fe-0.07>C-1.0>Si-1.0>Mn-3.0から5.0 Ni-15.0から17.0 Cr-3.0から5.0 Cu-0.15から0.45 Nb 1310以上
インコロイ800 NCF800(焼き鈍し) Fe-32.5 Ni-21 Cr-0.4 Al-0.4 Ti 520
ねずみ鋳鉄 FC材(鋳造したまま) Fe-3.3 C-2 Si-0.5 Mn 450
球状黒鉛鋳鉄 FCD370(鋳造したまま) Fe-2.5 C- 2 Si 370
オーステンパ球状黒鉛鋳鉄 FCD900A(オーステンパ処理) Fe-3.5 C-3 Si-0.2 Mn 900
黒心可鍛鋳鉄 FCMB360(焼きならし) Fe-2.5 C-1 Si-0.4 Mn 360
ニッケル Ni(焼き鈍し) Ni 99.99 335
インコネル600 NCF600(焼き鈍し) 72 Ni-15.5 Cr-8 Fe 550
ハステロイX (焼き鈍し) Ni-22 Cr-9 Mo-0.6 W- 18.5 Fe-1.5 Co-0.6 W 775
モネルメタル (焼き鈍し) Ni-30 Cu-4 Si-2 Fe-1.0 Mn 775
ニクロム GNC108(製造したまま) 80 Ni - 20 Cr 690-930
無酸素銅 C1020(完全焼き鈍し) Cu > 99.96 195
7-3黄銅 C2600(完全焼き鈍し) 70 Cu-30 Zn 280
6-4黄銅 C2801(完全焼き鈍し) 60 Cu-40 Zn 330
ネーバル黄銅 C4640 P(製造したまま) Cu-40 Zn-0.8 Sn 375
りん青銅 C5212 P(完全硬化) Cu-8 Sn-0.2 P 600
洋白 C7521 P(完全硬化) 65 Cu-18 Ni-Zn 540
ベリリウム銅 C1720(完全硬化) Cu-1.9 Be-0.2 Ni 900
黄銅鋳物 YBsC2 68 Cu-2 Pb- Zn(残り) 195
青銅鋳物 BC2C Cu-8 Sn-4 Zn 275
りん青銅鋳物 PBC2C Cu-11 Sn-0.3 P 295
マンガニン CMW 84 Cu-12 Mn-4 Ni 340から590
純アルミニウム A1085 P(焼鈍し) Al>99.85 55
アルミニウム合金(耐食アルミ) A5083 P(焼鈍し) Al-4.5 Mg-0.5 Mn 345
ジュラルミン(アルミ合金) A2017 P(T4, 常温時効) Al-4 Cu-0.6 Mg-0.5 Si-0.6 Mn 355
超ジュラルミン(アルミ合金) A2024 P(T4, 常温時効) Al-4.5 Cu-1.5 Mg-0.6 Mn 430
超々ジュラルミン(アルミ合金) A7075 P(T6, 焼入れ焼き戻し) Al-5.6 Zn-2.5 Mg-1.6 Cu 573
シルミン AC3A(鋳造したまま) Al-12 SI 140
マグネシウム合金 MP5(製造したまま、板材) Mg-3.5 Zn-0.6 Zr 250
マグネシウム合金 MB1(製造したまま、棒材) Mg-3 Al-1 Zn 230
マグネシウム合金鋳物 MC1(T4, 常温時効) Mg-6 Al-3 Zn-0.3 Mn 240
純チタン C.P.Ti(焼鈍し) H<0.013-O<0.20-N<0.05-Fe<0.20 320
チタン合金 60種、6Al-4V Ti-6 Al-4 V(焼鈍し) 980
亜鉛ダイカスト合金 ZDC1 Zn-4.0 Al-1.0 Cu-0.04 Mg 325
【参考】金属材料以外の引張強さ
種類 引張強さ(T/MPa)
絹糸 260
クモ糸 180
革ベルト 30から50
石英糸 1000
テグス(腸線) 420
ナイロン(PA66) 62から83
ポリエステル 44前後
ポリエチレン 21から35
ポリスチレン 34から52
メチルメタクリレート 50から76
木材(普通、木目に平行) 20から70
木材(堅木) 60から110
超硬合金 900から2500前後(種類による)
ダイヤモンド 正確には不明。60,000まで観測されており、225,000近くになるとされる
ガラス 50前後

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