サブゼロ処理の原理|その目的と必要性とは

2019年10月13日更新

サブゼロ処理とは、鉄鋼材料に施す熱処理方法のひとつで、その目的は複数あり、材料の硬さをさらに上げ、硬度を均一化し、寸法を安定させる、耐摩耗性を上げる、経年変化を防止する、着磁性を上げるといったことが挙げられます。サブゼロのことを、零下処理や、深冷処理という言い方もなされます。端的にいえば、焼き入れを行った鋼材を0℃以下で急冷する処理です。

サブゼロ処理の原理は以下の通りです。焼入れ処理によって鋼の持つ金属組織をマルテンサイトに変えてやることで、鉄鋼の硬度は飛躍的に向上します。この過程で、マルテンサイトに変わらずに残っている「残留オーステナイト」を完全にマルテンサイトへ変態させるため、焼き入れ直後に急冷するというものです。

サブゼロ処理はなぜ必要か

鉄鋼材料の金属組織は、高温での焼き入れによってマルテンサイトと呼ばれる組織に変わり、安定した硬さ、経時変化を示しますが、焼き入れた際には、マルテンサイト化しきれず残留オーステナイトと呼ばれる金属組織が残ってしまうことがあります。この組織はきわめて不安定で、時間がたつと時効効果と呼ばれる現象により、マルテンサイト化して体積がかわり、寸法が変わってしまうことがあります。

この現象は、ハイカーボンスチールと言われる高炭素鋼ほど発生しやすく、したがって高級刃物や包丁等をはじめとする硬さを重視したものではサブゼロ処理の必要性が高いといえます。また、金型やブロックゲージなど寸法変化が死命を分かつような用途でもサブゼロ処理が必要といわれる所以です。

サブゼロ処理の温度

焼入れ直後に0℃以下に冷却する処理であることからサブゼロの名称がついており、温度が低くなればなるほど耐摩耗性が向上する特徴を持ちます。実際には、焼入れ直後に急激に冷却すると、サブゼロ・クラックと呼ばれるヒビが鋼材に生じることがあるため、100℃程度の湯で戻してから冷やすこともあります。

サブゼロ処理は、一般に−60℃〜−100℃程度の温度まで下げるのがよいとされますが、これよりもさらに低い、超サブゼロ処理と呼ばれる手法もあります。こちらは液体窒素を用いて−160℃〜−200℃前後まで下げる手法で、耐摩耗性の大幅向上に効果があることが知られています。

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