上降伏点と下降伏点の発生要因と違いについて

2016年3月1日更新

上降伏点とは、降伏している際の最大の応力のことを意味し、下降伏点とはその反対に最低となる応力のことです。降伏点とは、端的にいえば材料に力を加えて変形させていった際に、その力を加えるのをやめても変形した材料がもとの形状に戻らなくなる力のポイントのことです。力がある一定の部分までであれば、その力を加えるのをやめればバネのように元の形に戻ってしまう弾性変形となりますが、それ以上の力を加えるとバネであっても伸びきってしまって元の形に戻りません。これが塑性変形であり、こうした元に戻らなくなる力の限界点が降伏点なのですが、ではなぜ上降伏点と下降伏点があるのでしょうか。

これには「降伏」のメカニズムが関係しています。力を加えていった際、材料がどのように変形するかを示した図が「応力−ひずみ」曲線と呼ばれるものです。縦軸に応力(ここでは加える力)、横軸にひずみをとったもので、異なる材料であれば異なる挙動を示しますが、鉄鋼材料において「降伏」というのは力をどんどん挙げていくと、「ひずみ」も次第に大きくなっていき、両者は比例の関係にあるのですが、ある力を超えると、ひずみが突然下がる瞬間があります。この加えている力を上げているのに歪みが下がってしまうことを「降伏」と定義しています。イメージとしては、金属の板に力を加えていくと板のひずみはどんどん大きくなっていきます。ところが板がポキっと曲がってしまって元に戻らない段階になると、ひずんでいく中で元に戻ろうとする板の形状が変わってしまい、いったん歪みが下がります。

軟鋼などでは、上降伏点でいったん材料が塑性変形した後も、それよりも低い応力で徐々に伸び(変形)が発生する「降伏点伸び」といわれる現象がおきることがあります。

降伏の仕組みは金属組織の結晶格子がどのように変わるのか、という問題ともつながっていますが、これはコットレルの転位と呼ばれる金属内の原子の挙動で説明がなされています。降伏点に上降伏点、下降伏点がある材料についてはその金属組織内の成分のうち、原子がどのように動くのかという点がポイントとなっています。

こうしてみてみると「降伏点」というのは厳密には段階があることがわかります。

上降伏点と下降伏点
上降伏点 下降伏点
弾性変形の最大基準の応力。この点にいたる直前の力までなら材料はバネのようにもとの形に戻る降伏の開始点。ここから塑性変形がはじまる。 塑性変形自体は、上降伏点よりも小さい応力ですすんでいく。この際の応力のうち、最も低い点が下降伏点。

なお、降伏現象が見られない材料については、かわりに「耐力」という概念でこの元に戻らなくなる力のポイントが計算されています。

材料の塑性変形(元の形状に戻らない変形)がどこではじまるのか、という点で降伏点を使うことが多いため、実用上は上降伏点がさまざまな指標として用いられています。

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