電着工具、電着砥石のメリット、デメリットについて

2011年4月17日更新

電着工具とは、精度よく仕上げられた金属の表面にメッキを施し、その上にダイヤモンド砥粒を接着したタイプの工具です。似た技術に電鋳や溶着などがあります。この工具のメリットはいくつかありますが、代表的なものでいえば、以下の通りです。

安価である
電着工具は、ニッケルメッキの上に1層だけダイヤモンドが密集させてある工具のため、ダイヤモンドの総量は一般の焼結ダイヤモンド砥石に比べると少なくなります。もっとも体積中のダイヤモンドの含有量が多いため、ダイヤの密集度は全ボンドで一番高くなります。
切れ味に優れる
工具の表面から砥粒が飛び出している高さを「突き出し量」といったりしますが、この高さが最も高くなるのが電着砥石です。砥石にとっての刃は砥粒ですが、この砥粒がボンドにしっかり保持されて負けない限り、突き出し量の大きいほうが一度に削り取る量が大きくなりますので、加工効率はよくなります。
形状が崩れない
研削砥石の例を見ればわかりやすいと思いますが、砥石は使っているうちに形状が崩れてきます。このため、ドレッシングをして目詰まりを解消したり、ツルーイングによって形状を整えると言った作業を定期的に行う必要があります。電着工具は損耗したら次の層はありませんので、廃棄するか、再電着(張り替え)して用います。ライフが短いという問題はあるものの、使用中に形状が崩れないため、ワークによってはこちらのほうがコストが安くつくケースもあります。
複雑な形状のものでも比較的容易に作れる
非常に複雑なダイヤモンドホイール等を発注したことがある方はご存知の通り、ホイールを製造する際には安全上の理由、技術的な理由などで形状にいろいろと制約があります。電着砥石の場合、電着を製造する液槽に入り、メッキ、ダイヤモンドをまわりこませることができる形状であれば、比較的自由な形状で工具を作ることができます。

上記のようなメリットとは裏腹に、電着工具には下記のようなデメリットもあります。電着タイプのほうが効果を発揮する状況なのか、レジン、メタル、ビトなどの焼結体タイプの砥石を用いるのがよいのか、よく吟味する必要があります。なお、電着砥石もボンドの分類上は「メタル」となりますが、焼結したものと電着とではスペックはかなり違います。

損耗の激しい加工には向かない
焼結体型の砥石は、砥粒を含有する使用可能な範囲である砥層に厚みがあり、砥石そのものが減っていきながら切れ味を維持していくという特徴を持ちます。電着工具の場合、表面の一層が減ったらそれでおしまいですので、砥石が日頃から激しく損耗するタイプの加工には向きません。
ライフが持たない
砥石がどれだけ長く使えるか、持つかといったライフの問題には様々な要因が関係してきますが、電着の場合、使うことができる砥層が限られていますので、他の条件を考慮しても、焼結型の砥石よりも寿命はどうしても短くなります。
非常に硬い素材には向かない
電着工具は、砥粒にダイヤモンドかCBNのどちらかを用いますので、硬い素材の加工を前提にはしていますが、ダイヤモンド焼結体などの特に硬い素材の研削や研磨にはあまり使われません。なお、ガラスやセラミックスなどとは相性がよく、様々な形状で多用されています。

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