傷のついた眼鏡レンズの研磨はできますか

2010年10月2日更新

眼鏡レンズはクロスとベース(縦方向と横方向)の曲率の異なるレンズです。こうした眼鏡用のレンズは一般にはガラス製かプラスチック製かに分かれます。このうち、現在のほとんどの眼鏡はプラスチック製の樹脂といわれていますが、これらはモールド(型に樹脂を溶かし込んで、目的とする大きさに成型する)後、レンズ表面自体を研磨して面精度を出す、というような作業は行いません。通常は、プラスチックレンズが成型された後、洗浄工程を経て、レンズの表面にナノ単位の透明な膜を何層か積層していきます。これはどのように透明に見えるものでも、光を100%透過させることができないため、より光の透過率をあげて視界を明るくするために、光学膜をつけることで、本来のレンズ表面で起きてしまう光の散乱、吸収などの損失を極力防ぐ工夫がなされています。

したがって、傷がついたからといってメガネレンズの表面を研磨剤を使って磨いてしまうと、残っている膜が剥がれ、またレンズ表面がキズだらけになってしまいます。研磨とは、結局のところ、より細かい砥材で物体の表面に傷をつけていく作業ですので、すでに購入されている眼鏡レンズについてはこうした研磨は厳禁です。素材がプラスチックではなく、ガラス製のレンズであっても、製造工程上、たしかに研磨は行われていますが、一旦メガネレンズとして製品化されたものは前述の通り、表面に透明な膜がつけられています。これらが壊れれば、光の透過率が下がったり、紫外線が余計に目に入ったり、あるいは防塵や防汚コーティング、帯電防止コーティングなどが施されている眼鏡の場合、それらの機能も失われ、視界も定まらなくなります。

眼鏡レンズの手入れは、水洗い後にやわらかい布で拭く、専用のメガネ拭きや薬剤を用いて丁寧に行うのがベストです。最近では超音波での洗浄も目にしますので、研磨剤などで表面を磨くことはせず、汚れが落ちにくかったり、微細なキズがついてしまっている場合は購入した眼鏡屋さんに相談してみましょう。

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