自動車鋼板の種類

2016年11月8日更新

鋼板のうち、薄板における大きな需要を占めるのは自動車です。このため、鋼板メーカーも多大な労力とコストをかけて自動車用として最適な鋼板を開発してきています。

自動車は外板パネルは軟らかい薄板鋼板を使い、骨格の鋼板は高強度化するのが一般的です。

自動車のような大量生産でかつコストが非常に重要となる用途では、加工性についても十分に検討しないといくら性能がよくても鋼板としては使うことができません。

自動車用鋼板は、自動車を見ればおおよその見当がつくとおり、複雑な形状を実現するためにプレス成形で加工されるのが常です。他業界では、鋼板といえば、曲げや溶接などの加工が主体となることもありますが、プレス成形を考える場合、鋼板に求められる性能がかなり異なってきます。

プレス成形には、張り出し成形と深絞り成形があります。張り出し成形には軟らかくよく伸びる鋼板がマッチしますが、深絞り成形には軟らかいだけでは性能不足で、伸びるだけでなく、縮む変形をする必要があります。

複雑な形状をしている自動車の外板パネルには、この深絞り成形性が求められます。

縮み変形のしやすさをしめす指標がr値(ランクフォード値)と呼ばれるもので、この数値がおおきいほど深絞り成形に優れる鋼板ということができます。

r値は引っ張り変形した際の幅方向の縮み量と板厚の縮み量の比率(幅縮み量÷板厚縮み量)で表されてます。双方が同じように減少するなら1となり、板厚縮みが大きいほどに値は0に近づき、幅縮みが大きいと数値は上昇します。

自動車用の鋼板のうち、軟らかい薄板鋼板についてはこのr値がいかに大きいものを作るか、という点が課題となってきました。その結果誕生したのが、IF鋼です。この鋼板は深絞り加工性能を高めるために、炭素量と不純物が非常に低いレベルにおさえられています。

また、焼付硬化鋼板とも呼ばれるBH鋼は、加工している際は比較的やわらかいため、加工性がよい状態でありながら、自動車のボディーとして組みつけられるころには、硬化して少々の衝撃には凹みにくい、よろいとしてのボディー性能を持たせることができます。鋼板を塗装したあとに熱で乾燥させる際、その熱で鋼板が硬化するという自動車の製造工程をよく考えられた上で開発した鋼板です。

DP鋼は、加工に必要なやわらかさと、自動車鋼板として求められる硬さという一見すると矛盾する二つの性能をあわせ持つ鋼板です。金属組織そのものを強化しつつ、加工のしやすさという側面を残した高機能鋼板です。

TRIP鋼は、自動車が衝突した際の安全性を確保するための鋼板ともいえます。衝突の際に起きる「動的変形」をおこすときに、鋼板自体が異様に硬化する特徴を持ちますが、最初からこのレベルの硬さをもった鋼板では、自動車用鋼板として加工することができません。このため、プレスをはじめとする静的な変形ではあまり硬化せずにやわらかいまま、という特徴を持ちます。

いずれも使われる自動車の部位に求められる性質だけでなく、製造上求められる加工性や加工効率といった部分にも大きなウェイトがかけられていることがわかります。

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