インドネシアにおける通関

2015年3月16日更新

インドネシアの通関は時間がかかることで有名ですが、その具体的な日数や内訳、通関にまつわるトラブル、注意事項等についてまとめてみます。日本からジャカルタまでエアー輸送したところ、翌日にはジャカルタに着荷しているのに、現地の客先へ納入されたのはその2週間後だった、というようなことがなぜ起きるのか、という点について述べていきます。隣国のタイなどに比べると、インドネシアへの納入はわりと長めのリードタイムを見ておく必要があるのは下記のような事情によります。

インドネシア通関の手続きの流れ

インドネシアの輸入通関においては、検査が必要な貨物ごとに「チャネル」(カテゴリーに分類する)を設け、それぞれで通関にかかる時間や内容が異なります。レッドライン(レッドレーン)、グリーンライン(グリーンレーン)、イエローライン等と呼ばれるものがチャネルです。チャネルごとに要求される手続きや時間が変わります。

考え方としては、「物品」のリスクと「輸入者」のリスクの双方から、このチャネルが決められることになります。たとえば、インドネシア税関が注意を要するハイリスクの物品を、過去に何度か関税法違反を犯しているような輸入者(Very High Risk)が輸入しようとした場合、最高のレッドライン扱いでの通関となる、というような仕組みです。

インドネシア通関の手続きは、大きく言えば、1)納税、2)申告、3)審査、4)許可の順番に進んでいきます。

まず、一般的なインドネシアの通関は納税からはじまります。BMと呼ばれる基本関税、PPNと呼ばれる付加価値税、PPh22(前払い法人税)、PPnBM( 奢侈品販売税)、Cukai(物品税)など、品目(HSコード)によって規定されている額を銀行振り込みします。そこで税金を領収したレセプトを入手してから、輸入申告手続きに入ることになります。たいていの企業は、自社での輸入申告をせずに輸送業者・通関業者に代理で依頼していますので、彼らが輸入申告書(PIB)の下書き(ドラフト)案をつくり、輸入者がそれを承認したのちに、輸入申告を行う形になります。

インドネシア輸入時にかかる代表的な税

CIF価額 x 関税率 = BM(基本関税額)

(CIF価額 + BM)x PPN税率 = PPN(付加価値税)

輸入申告後、税関による申告内容チェックを経て先に述べたチャネルごとに手続きが振り分けられます。レッドライン、イエローライン、グリーンライン、プライオリティラインに振り分けられ、それぞれで要求される手続きが異なります。

支払確認(税金)、ライセンス確認、書類審査、現物検査、SPPB(物品搬出承認)のうち、すべてが必要となるのがレッドライン、イエローライン、グリーンライン、プライオリティラインに割り振られたものについては、これらの手続きのいくつかを部分的に行うことになります。

SPPB(物品搬出承認書)が出されると、文字通り、通関手続が完了したことになりますので、トラック等に積込み、現地の配達先まで輸送することになります。SPPBが出ると手続上はすぐにトラックへ積み込めることになりますが、実際には空港などが混雑していると、さらに1日追加でかかることがあります。

インドネシア通関にかかる日数|レッドライン、イエローライン、グリーンラインにかかる日数

以下、各プロセスに具体的にどれくらいの日数がかかるのかを見ていきます。先に述べた通り、インドネシア通関では貨物・輸入者によってチャネルごとに一旦申告物が振り分けられますが、それぞれのチャネルで実施される内容と日数は次の通りです。

レッドラインによる通関

書類と貨物の現物検査の双方が実施されます。下記の各プロセスで1〜3日。5つある各プロセスごとにおおむね3営業日と考えておくと無難です(3営業日x5=15営業日)。

  • Payment reconciliation/securities(支払確認)
  • License Confirmation(ライセンス確認)
  • Document checking(書類審査)
  • Physical checking(現物検査)
  • Release permit (SPPB)(搬出承認)

上記5プロセスあり、各プロセスで3日と試算すれば、検査で2週間強はかかる(15日)計算になります。全貨物のおおよそ3割〜4割強はこのレッドライン扱いでの通関がなされます。

現物検査が必ず実施されるチャネルとなるため、通関にはもっとも時間がかかり、実際に梱包されている箱や包装が開梱もしくは破壊されます。

熱帯特有の高温多湿の環境下で数日から10日程度は放置されることになる為、鉄鋼系素材を使っている製品などで、防錆処理を施していないものはこの期間だけで錆がまわってしまうことがあります。

イエローラインによる通関

貨物をリリースする前に書類審査を行うチャネルです。以前はレッドラインとグリーンラインしかありませんでしたが、その中間のチャネルとなります。

  • Payment reconciliation/securities
  • License Confirmation
  • Document checking
  • Release permit (SPPB)

レッドラインと違い、物理的な現物検査が必須となっていない点を特徴とします。書類検査を行い、審査に通ってから貨物はリリースされるというのが一般的な流れです。理論上は、3営業部x4プロセスで、12日程度が通関にかかる時間となりますが、状況によっては現物検査が入ってくる可能性がありますので、油断はできません。

グリーンラインによる通関

一般企業が輸入を行う場合においては、もっとも通関に時間がかからないチャネルとなります。貨物をリリースしたあとに書類審査を行う方式であり、書類審査に通過してから貨物をリリースするイエローラインとは順序が逆になるため、理論上はこちらのほうがスピーディに進みます。

グリーンラインならば1週間を見ておけばおおむね問題ないとされます。即許可の場合は、4日目に貨物のリリースという場合もあり得ますが、限られた貨物や輸入者のみのため、グリーンラインであっても1週間は見ておいた方が無難です。

原則、リリース後の書類のみの審査となりますが、ランダムで貨物検査(X線検査等)が実施される場合があります。

  • Payment reconciliation/securities
  • License Confirmation
  • Release permit (SPPB)
  • Document checking

イエローと一見変わらないように見えますが、リリース許可となるSPPBがでたあとに書類チェックがあるだけという点が大きく違います。一般的な企業が行う輸入通関としてはこのグリーンラインによるものが最も早くなります。

プライオリティレーンによる通関

上記の他、MITA Non、Priorityと呼ばれる特殊なチャネルも存在します。

ただし、認定された企業しか使えず、その要件のハードルはかなり高いものになっています。例えば、過去に通関の誤申告・ミス等がなく、関税法違反等もなく、輸入関税支払遅延がない、輸送業者・通関業者などに頼まずとも自ら通関申告を直接できる、といった要件となります。プライオリティラインの場合、書類審査、現物検査がともにありません。下記、2プロセスだけであり、さらに上記のようにこれらに時間がかかる点を考慮しなくてもよい為、他の通関の早い一般国に近いリードタイムでの通関が可能となります。

  • License Confirmation
  • Release permit (SPPB)

インドネシア通関におけるトラブル

インドネシアと言えば、賄賂(ワイロ)というくらい悪名高く、税関においても例外ではないといわれていました。日本企業各社はコンプライアンスの問題があるため、表立ってティーマネー(賄賂)をインドネシア税関の職員に渡す、ということは稀になってきていると言えますが、先進諸国の通関行政に比べるとはるかに不確かな要素や不透明な部分があるのは事実です。

税関も応接室や打ち合わせ場所を物理的にガラス張りにしたり、面談などを銀行の待合などのようなチケット制にして、個別の税関担当を指名しづらくしたりといった工夫、またクリーンで公正な通関を実現すべく、当局もたびたびキャンペーンをはってきています。実際のところ、理不尽な指摘によって日系企業が損をする、という事例はまだまだ起きています。またそもそも輸入できる品目に各社制限を設けるライセンス制度自体にも無理があるのでは、との指摘は以前からなされていますが、今のところ改善されるには至っていません。

通関上のトラブルにはいろいろなものがありますが、実際に遭遇したり、話に聞くようなトラブルには次のようなものがあります。

インドネシア通関トラブル例1

輸入申告時に用いたHSコードが、あとから「不適切なHSコード」と指摘され、脱税扱いで追徴課税を課せられた。6桁までは輸出申告に用いたHSコードを用いていたが、この部分については日本税関等にも確認したが、問題のないHSコードだったが、そもそもこの部分について現地税関が納得しなかった。

通関トラブル背景

開発途上国向けの貿易で怖いのがこの正論が通じない、という現象です。HSコードは、その番号のつけ方(品目分類の基準)についてはHS条約で規定されており、加盟国ではそれらルールに基づいて番号が決定されている建前です。理論上、どの国でHSコードを振ろうが、同じ番号になるはずですが、実際にはかなり違った結果となります。

HSコードは輸出側は輸出国税関、輸入側は輸入国税関に決定権があります。先進国の多くには通関の前に何番のHSコードで通関するのが妥当か確認するための「事前教示制度」が存在しますが、インドネシアの場合、この制度が事実上ありませんので、前もって税関の判断を仰ぐこともできません。

インドネシア通関トラブル例2

輸入時にはHSコードごとに設定されている様々なライセンスがあるが、所定のライセンスを取得していなかったため、通関ができずに止まった。

通関トラブル背景

輸入者として保持するAPI-P(製造業者向け)、API-U(非製造業者向け)といったライセンスだけでなく、個々の品目についても固有のライセンスを求められることがあります。このため、インドネシアへの輸出前には、その品目にライセンスが必要かどうか輸入側に確認しておく必要があります。

輸送業者の多くは、ライセンスの有無が判明しない場合、日本からの輸出通関を引き受けないため、事前確認が必須です。

インドネシア通関トラブル例3

輸入時にライセンスが必要な品目であったため、これを避けるために、実態とは少々異なるHSコードをつけて毎回通関していたところ、HSコードの品目分類の違いを指摘され、過去数年にわたって遡った追徴金を支払うことになった。

通関トラブル背景

多くのインドネシア企業の輸入担当者の間では、輸入時にライセンスのかからないHSコードにして輸入申告している例はよくあります。実態に沿う内容であれば問題はありませんが、実物とかなり異なるHSコードをつけて申告している例も数多くあります(どのように解釈してもそのHSコードには当てはまらないというようなケース)。ライセンスの取得に時間がかかったり、煩雑な手続きを嫌ってこのようなことを繰り返す会社の多くには、きちんとした輸入担当者(インドネシアの輸入業務に精通したスタッフ)がいないこともあり、あとから数年分もの膨大な追徴金を科せられるケースもあります。

特にグループ会社間での取引において注意を要するのは、現地側で被った追徴金などの損害が、連結決算対象の現地法人の会社であれば、結局、日本の本社側の損失になる、という点です。一般には、「輸入者の責任」で片付けられるのですが、日系グループ会社間の取引などでは、必ずしもこうした割り切り方ができるわけではありません。専門知識に長けたスタッフが不足している現地の製造拠点にすべてを押し付けたり、責任を擦り付けるようなことも散見されます。

インドネシア通関トラブル例4

関税を支払いすぎてしまったため、関税の還付手続きを行おうとしたところ、会社に査察が入り、違反してもいない内容で罰金を科せられた。

通関トラブル背景

インドネシアで払いすぎた関税を還付してもらう、というのはほとんど成功例を聞きません。反対に、会社を徹底的に調べられた挙句、納得のいかない税法違反等で、関税とは関係のない追徴金などを徴収される例もあります。したがって、はじめから適正な手続きを行っておく、ということがとても重要です。公的機関となる税関を通ってしまった後は、いかなる訂正にも何らかのペナルティが科されると考えておく必要があります。

インドネシア通関トラブル例5

輸送中に「銘板」がさびてしまい、新品の設備にもかかわらず中古であると指摘されて、通関が止まった。

通関トラブル背景

インドネシアでは多くの物品のうち、中古品に関して規制があるため、新品が中古品と誤認されたり、あるいは輸出者・輸入者が中古品を新品を偽ると罰則を科せられることがあります。まぎれもない新品の機械・設備を送ったものの、通関手続き中に錆が出てしまい、新品とは認めてもらえなかった、というようなこともあります。

中古に間違えられると困る為、輸出前には毎回「化粧直し」のような追加加工・磨きの手間をかけている会社も多くありますが、高温多湿環境で長時間留め置かれるうちに、錆がまわってしまうことも少なくありません。

通関に時間がかかる事と、熱帯に相当する高温多湿の気候のため、「錆」に関しては他国への輸出と異なり、細心の注意を要します。これはタイ、インド等東南アジア、南アジアの熱帯地域でも同様だが、通関に時間がかかり、野ざらしにされる時間が長い、という点を鑑みると、インドネシアはかなりその確率が高くなります。

熱帯地域における錆防止には、シリカゲルだけでなく、気化性防錆紙(気化防錆紙)によるラッピングでバリアする方法が一般的です。また防錆油を塗布する、という方法もよく使われ、鋼材部分の表面に防錆効果のある塗料などをあらかじめ塗布、あるいは防錆機能を持つ鋼材を使う、等も対策として考えられます。注意を要するのは、シリカゲル(乾燥剤)だけでは湿気しかとることができないため、熱帯地域等では防錆の効果が十分に見込めない点です。

インドネシア通関トラブル例6

設備機械の「銘板」に刻印されている記号と、インボイスに書かれている記号・品名が違っており、現物との違いを指摘されて通関が止まった。

通関トラブル背景

これはインドネシアに限った話ではなく、銘板や製品名を現物に刻印などしている場合、その内容とインボイス内容との違いは、通関上、現物検査となった場合に問題となることがあります。

インドネシア通関トラブル例7

輸入申告時のHSコードの誤りがたびたび指摘されたため、インボイス自体にもHSコードを書くようにしたところ、輸入申告に使われているHSコードとインボイスに書かれているHSコードの違いを指摘された。

通関トラブル背景

インボイスにHSコードを振って輸入通関業者や輸入者の助けとする考え方がある一方、税関からの誤解を招く可能性があるため、インボイスにはHSコードの記載を避けたほうがよいという意見もあります。HSコードの性質上、輸出側と輸入側のコードが違うことは珍しいことではないため、それを輸出側の貿易書類であるインボイスでもって輸入側のHSコードを「指示」してしまうような方法も、かなり問題があると考えられます。

HSコードに関するやり取りは、インボイスではなく、別の手段で情報交換を行った方が無難です。

インドネシア通関トラブル例8

ラマダン明けに貨物を送ったところ、顧客からいつまで経っても届かないとのクレームが発生。

通関トラブル背景

日中に食物を口にしてはならないというイスラム固有の断食の習慣であるラマダン期間中やラマダン明けの混雑には異様なものがあり、貨物の物損なども起きやすくなります。通関に時間がかかるだけでなく、こうしたリスクも考慮の必要があります。

ラマダン期間中の輸送リードタイムは非常によみづらいものがありますが、少なくとも通常のリードタイムに比べて7日以上はかかるものと想定したほうがよいでしょう。

インドネシア通関トラブル例9

ジャカルタ港が混雑していたので、ドライポートを利用したところ通関のリードタイムにかえって時間を要した。

通関トラブル背景

インドネシアも通関の混雑状況の解消のため、港ではなく、海に隣接していない内陸部分にドライポート(Dry port)を作り、そちらでの通関も可能としています。ただし、現在のところ期待されていたほどのメリットが出ておらず、ドライポートを使ったからと言って通関含めた輸送リードタイムが必ずしも短くなるわけではないようです。

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