英語社名は登記できるか|英文社名を定款に記載する

2015年7月6日更新

貿易を行っていると、当然、自社の社名の部分は英文、英語での表記が必須になってきます。そもそも貿易書類であるインボイス、パッキングリストをはじめ、B/L(船荷証券)、waybill、すべて英文社名での表記となります。

例えば「砥石株式会社」という会社であれば、英文社名としては以下のようなものが考えられます。

  • Toishi Company Limited
  • Toishi Co., Ltd.
  • Toishi incorporated
  • Toishi K.K.

直接貿易を行っていなくとも、取引先の顧客が海外で自社製品を使うとなると、工業製品や生産財の多くは、英文での検査証明書や分析表、使用用途説明、取扱説明なども英語で準備する必要が場合によってはあります。特にメーカーがどこなのか、というのはあらゆるシーンで記載する機会が多いため、製造業で「うちは国内専業だから」といっても、取引先を経由して海外に製品が輸出されているような場合は、英文社名をきちんと決めておいたほうがよいかと思います。

英文社名には、日本のように「株式会社」を前につけるか、後につけるか、といういわゆる前株(まえかぶ)、後株(あとかぶ)の問題はなく、すべて社名のあとにつきます。ただし、日本国内でいうところの「株式会社」と、海外の株式会社はほとんど似ていたとしても、会社法が異なるため、法人としての性質が若干異なることが通例です。

では実務上どうするか、といえば、ほとんどが現地に固有の会社法に縛られないCompany Limited(省略形:Co., Ltd.)が使われています(厳密に言えば、英語圏等でのCompany Limitedは、その国の会社法に相当する法令による法人となりますので、日本に登記している日本企業がCompany Limitedと名乗るのとは意味が異なります。日本企業が英語社名を名乗ったからといっても、現地の会社法に縛られないという理屈です)。創設者の人名を起源とする会社名の場合は、「社名 & Company」という言い方もよく使われます。有名どころでは、三井物産のMitsui & Co.やシオノギ製薬のShionogi & Co., Ltd.もこのパターンです。

ただ、日本の内国法人は日本で「法人登記」をしており、その登記上の社名が正式な社名となります。この際、英語社名や英文社名(株式会社の部分を、Co., Ltdと表記するような社名)を登記することができません。

したがって、英文社名というのは登記によって決めるのではなく、各会社がそれぞれ好きに「名乗る」というような性質のものとなります。もっとも、組織が大きくなるなどの理由で、英文社名も正式な書面で決めておきたい、というようなこともあるかと思います。

現状、こうした場合は、ほとんど定款に英文社名を記載して決めている企業が多いです。もっとも、定款に英文社名が書いてないからといって、英文社名を名乗れないというようなことはありません。自社名を英語にする場合には、いくつかのパターンがあるため、統一するためにこの表現を使う、という社内ルールのようなものは必要と思いますが、自社の英文社名をどうするか、それを法令上決めるものはありませんので、各社自由にホームページに記載するもよし、メールやファックス、送り状、名刺などに記載するもよし、定款に記載して決めておくもよし、ということになります。

なお、海外企業と貿易上のやり取りが多い、というようなことであれば、日本の株式会社の非公式略称であるK.K.というのは避けたほうがよいかもしれません。日本企業とやり取りの少ない会社の場合、そもそも日本語の会社の名前になじみのない国も多いため、会社名かどうかをCompanyやIncorporatedの文言で判断されることもあるからです。

なお、工業系の製造業でよく使われる「製作所」や「工業」については、そのままローマ字読みで英文社名になおすパターンと、それぞれの英語に訳して記載するパターンとがあります。製作所をManufacturing、工業をindustriesと記載すると、どのような性質の会社なのか、相手によってはイメージがつきやすいこともあります。

社名にある製作所、工業をどう訳すか
日本語 英語
株式会社砥石製作所 株式会社砥石工業
Toishi manufacturing Company Limitedもしくは Toishi MFG Toishi Kougyou Co., Ltdもしくは Toishi Industries Co., Ltd

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